ーOOO-借りぐらしの光と闇と窮屈さ

 ジブリ映画が上映になると、…というか夏になるとかならずジブリ系の展覧会を開いて楽しませてくれるのが東京都現代美術館さんなのですが。
 今年の夏は、現在上映中の「借りぐらしのアリエッティ」の世界を体験できるということで、東京都現代美術館に行ってきたですよ。
 日曜日の午後3時頃到着したら、チケット買うのに10分待ち、さらに入場で5分待ったですよ。こんな混むとは思わなかったな。事前にチケット買っとくのが吉でありましょう。

 この展覧会を見るには、いちおう先に劇場でアリエッティ見てきた方が良いと思いますぞ。
 あと、せっかくなので種田陽平さんがどんな人なのかも知っておいた方が良いかもです。っていうかコレ、種田陽平展なので。

 で、以下チョイとアリエッティのネタバレ目に書きますので、気になる人は読み飛ばしてくだされ。


 「アリエッティ展」の部分は、床下に住む小人アリエッティの家を見に行くというコンセプト。
 展示室の入り口が、いきなり床下換気口!
 わたしたちは身長10センチほどの小人になったつもりで、床下換気口の鉄格子をくぐり抜け、床の下をごそごそと歩き回るのです。
 アリエッティの暮らす家は、人間の道具をあれこれ借りて暮らす「借り暮らし」。だから、巨大な人間の道具が、あちこちに使われています。
 アリエッティのお父さんの様々な工夫で、それなりに快適で不便さを感じない生活を送っていたことがうかがえます。


 ちょっと話はそれるんだけど、「アリエッティ展」は巨大なモノがたくさんある展示ということで、ワタシは個人的にロン・ミュエクみたいな「いかにも現代芸術!」な世界を想像してたんですが。

 そこはそれ、コレはやっぱもうちょっと「出し物」っぽく作られた世界だったですな。スケール感を厳密に統一したような世界ではなかったです。見た目、面白さ優先、みたいな。
 「出し物」としては圧倒的に「正解!」なのですが。
 でもさ、ロン・ミュエク作の「お手伝いさん…樹木希林」とか見たくない? こっちをギロッとにらんだり、地団駄を踏んだりするわけさ。
 …え、そんなの怖い、気持ち悪いって? そこがいいんじゃんさー!


 アリエッティに話を戻すと。
 で、そういう地下の世界をくねくねと歩いていくと、最後に出口の床下換気口が見えてきます。
 床下の闇の中から、鉄柵越しに見た「光あふれる緑の庭」は、とても美しくて感動的です。
 そして私たちは床下を抜け出して、巨大な雑草の間をくぐり抜けて歩きます。
 なんでもない雑草だらけの庭は、光にあふれ、空は高く広がり、バッタやテントウムシがいて、なんと魅力的に見えることか!


 思い返してみれば、ワタシが床下の世界を歩いている時にとても魅力的に見えたのは、窓や隙間からのぞいて見える「人間の世界」…「外の世界」でした。
 アリエッティのお父さんが作ってくれた、安全で快適な床下の世界。そこにずっと暮らしていれば、彼女は何一つ不自由なく生活できたのだ。
 だけど、アリエッティは「外の世界」の魅力に、そして床下の世界では得られない「光」の魅力に惹かれ、じっとしていられなかったのだ。


 そんなことを、自分の身体で感じた展覧会でした。