ーOOO-白州がはぐくむ天然水 … サントリー白州蒸溜所探訪記

 
 ということで、あずさ7号でやってきたのが、小淵沢駅なのです。
 小淵沢駅は、長野と山梨県の県境にある山梨県北杜市に位置します。標高は約880m。ぼへへへーんと電車に乗っているウチに、いつの間にやら東京スカイツリーよりもはるかに高いところまで登山をしたってコトになるワケです。
 この地にあるサントリー白州蒸溜所は、深い森に囲まれた山の上の蒸溜所なのです。
 サントリートピックスさん主催の白州蒸溜所見学ツアーは、ここからスタートです。
 目の前に広がる山々が、南アルプスです。
 正面に見えるのが甲斐駒ヶ岳。雲に頂上が隠れていますが、その高さは2967m。日本百名山の一つに数えられています。

 小淵沢駅で集合した私たち。うきうきしながらも、よそよそしい。そんな見知らぬ者同士をのせてバスはひた走ります。
 白州蒸溜所に行くその前に、私たちはその近くを流れる尾白川渓谷を見学することになりました。

 尾白川は日本名水百選に選ばれた、水のきれいな川なのです。
 白州蒸溜所では地下水をくみ上げて使用しているので、この尾白川の水を直接使っているわけではありません。しかし、この甲斐駒ヶ岳の地下を流れる伏流水を使っているということです。


 ということでここからは尾白川渓谷の登山道を歩いて行くわけです。
 実際に、ここはトレッキングコースなのだそうで、ここから山頂までは8時間くらいかかるとか。
 登山道の入り口には、ファニーさのかけらもないガチでヤバげな警告が…!

 
 巨大な岩が山のあちこちにゴロゴロしています。
 ここでサントリーの方が説明してくれます。
「この甲斐駒ヶ岳花崗岩質で、このような白っぽい岩が山の中までギッシリなっています。尾白川の水は、この花崗岩のヒビなどの隙間をくぐり抜けて磨かれていくのです」

 登山道を歩いて行くと、途中にキャンプ場がありました。
 写真の左手奥が谷になっているらしく、そちらの方からサワサワと水の流れる涼しげな音がしています。

 さらに奥地に進むと、太い杉の木が立ち並ぶ一帯が。
 参加者は元気いっぱいでカメラを片手にあれこれ撮影しまくりです。

 緑の中に、白木造りの駒ヶ岳神社が姿を現します。
 ちなみに「駒ヶ岳」という名前は、この付近に天津速駒という白馬がいたことに由来するそうで、「尾白川」という名前も「白馬の尾」が由来なのだそうです。

 と、その先にはドーンと
「名水百選 白州・尾白川」
という看板が!
 そう、ここが目的地の、尾白川にかかる吊り橋なのです。


 吊り橋の両端はコンクリートで出来ているし。
 橋の踏み板もまだまだ新しいし。
 金属製の太いワイヤーが、吊すだけでなくあちこちの方向から引っ張っているし。
 見るからに丈夫。怖くないな。

 と思いきや、不安になる細さ。人と人がすれちがう事は出来るけれど、うーん、でもなーんか、細い…。
 あと、写真で伝わって無いと思うけど、橋が妙に長くて、それから高いんですよコレが!
 この橋を、カメラ片手に参加者が渡る!

 
 参加者が渡る! …って、他人事じゃないんだコレが。
 オレも渡る!
 
 ギョッ!
 揺れる! 揺れるっ!
 上下にグラグラするのも怖いけど、左右にミシミシするのも怖いです。
 こんなにたくさんの人数が一度に乗っかっちゃって大丈夫なの…? 平気なはずだけど、ついつい不安な気持ちに…。
 
 心が落ち着いてくれば、景色を眺める余裕も出てくるもので。
 …なーんか、川岸がやたらと白くない?
 と、ここでサントリーの方が言いました。
「先ほど説明した花崗岩が砂になって、白く堆積しています。
 砂がたまった場所は砂州といいますが、白く砂がたまっているので白い砂州、ということで『白州』です。
 白州蒸溜所の「白州」という名前の由来は、ここにあるんですね」
 
 吊り橋の上から真下を見下ろすと、尾白川の川底に白い砂がたまっているのが見えます。なるほどね、これが白州かぁ。
 この白い砂が水を磨いていく。これこそが、白州の南アルプス天然水なんだなぁ。
 
 子供たちが尾白川で水遊びをしているのが見えますが、これは森と水に親しむ自然体験教室の最中なんだそうです。

 ちなみに、通常のウイスキー工場見学コースでは、この尾白川に来ることはありません。
 ですが、いま紹介したサントリー「森と水の学校」を受講するとか、あるいは尾白川渓谷トレッキングコースに直接やってくれば、この尾白川の風景を眺めることが出来ますよ。


 尾白川を見学した帰り道、ふと小さな水の流れに目をやれば、川底にはやはり白い砂が堆積していました。
 標高約3000mの山の上から花崗岩にしみこんで磨きぬかれたのが、この白州の水なんですね。

 こうして磨きぬかれた白州の水は、ウイスキーの仕込み水だけでなく、「サントリー南アルプス天然水」として私たちが手にすることが出来ます。
 じゃあ、その「天然水」ってどんな工場で作られてるんでしょうか?
 …という話は、また次回と言うことで。