ーOOO-森とウサギとウイスキー…サントリー白州蒸溜所探訪記

「都会から離れたこんな山深い場所に、なぜサントリーは蒸溜所を作ったのだろうか?」
と、いったことを考えたり考えなかったりしながら見学ツアーに参加していたワタクシなのですが。
 蒸溜所の入り口にある石版に、その答えはありました。(→拡大して読む
 
「白州島原峡はウイスキーの理想郷である」
 ニッポンのウイスキー発祥の地、山崎蒸溜所を作ってから50年。
 サントリーは新たなウイスキー作りの地を探し求めました。
 その中で、良質で豊かな水・清涼な空気・広大な大地と樹海といった良いウイスキー作りに欠かせない条件を兼ね備えた白州の地を、第二のウイスキー作りの地としたのでした。


 ところで、なぜ第二のウイスキー作りの地が必要だったのでしょうか?
 それは、様々な種類のウイスキーを作りわける必要があったからです。
 ウイスキーの本場、スコットランドには100を超える蒸溜所があります。それぞれの蒸溜所では、個性的な原酒を造っています。その原酒の一部はブレンド用として他の蒸溜所に売られています。様々な蒸溜所で作られた原酒をブレンドすることで、より深みのある味のブレンデッドウイスキーが生まれるわけです。
 しかし、日本にはウイスキーメーカーがあまりにも少ないですし、原酒を融通しあうということもありません。
 したがってサントリーは、深みのあるウイスキーを作るために、様々な種類の原酒を作り分ける必要があったのです。
 京都とは全く気候の異なる山梨に蒸溜所を置いたのは、全く新しい味のウイスキーを作ろうという意気込みの表れだった、というわけです。
 さてワレワレはいよいよ蒸溜所の中へ。
 ここでもブロガーは写真を撮る!
 ところで、蒸溜所の建物が森に囲まれているのがわかりますか?
 あたりは深い森の香りがするのですが、その奥からウイスキーの香りが立ち上ってきます。

 ウイスキーには、この森に住む乳酸菌の力が欠かせません。
 ウイスキーをつくるためには、まず麦汁を発酵させる必要があります。麦汁に含まれる糖は、乳酸菌の力でアルコールになるのです。
 この巨大な木桶の中で、麦汁はゆっくりと発酵していきます。



 さて、ココでクイズ。
「発酵した麦汁」と言うと、あなたはどんな香りを想像しますか?
 ウイスキーみたいな香り?
 それとも、ビールみたいな香り?
 正解は、「すっぱい臭い」でした。けっこうツーンとしましたです。ハイ。


 ところで、以前おじゃました時と違って、白州蒸溜所は大忙しのようです。それは、角ハイボールのブームが理由だと思うのですが。
 だから、以前よりもたくさんの木桶で仕込みが行われていました。


 3日ほど発酵させた麦汁から、この巨大な蒸留釜をつかってアルコール分を取り出します。あ、この釜の巨大さが伝わらない人は、こちらの巨大な画像を見るといいですよ。
 左にあるのが初溜の釜、右にあるのが再溜のための釜です。初溜の釜が6釜、再溜の釜も6釜あります。それぞれの釜は大きさも形も異なり、味が大きく変わります。
 この6釜×6釜の組み合わせで、白州蒸溜所では様々な種類の原酒を作りだすことが可能になるわけです。
 ここで話はちょっとそれますが、このほかにも白州蒸溜所では、竹炭で濾過したウイスキーとか、あるいは梅酒の樽で熟成させたウイスキーといった、個性的かつ日本的なウイスキー作りのチャレンジが続けられていると言うことです。
 以前来た時と違って、この日は蒸留釜に火が入っていて、グラグラと麦汁が熱せられる様子を見ることが可能でした。
 釜の首(?)のところに、ちいさく光る部分が見えますか?ここが窓になっていて、プクプクと泡立っている様子がのぞけて見えました。

 こうしてサントリー白州蒸溜所は、豊かな森の中で、良い水を使い、個性的なウイスキー作りにチャレンジしている、というわけなのでした。
 ちなみにこのページで紹介した蒸溜所見学ツアーは、誰でも参加できますよ。


 このあとワレワレ一行は、ウイスキーに関するマジメな勉強会と、おいしい試飲会を行ったりなんかして。
 あ、このウイスキー講座は、事前に予約すれば参加できますよ。

 ところでこの会場のカウンター、銀座の老舗の「うさぎバー」というお店から譲り受けたという、由緒正しいモノなんですよ。
 この日のカウンターはセミナー仕様になっていたのですが、ふだんはいろいろなウイスキーを有料試飲できるようになっているんだとか。

 ここに来るのは、わざわざこんな山奥までやってきて有料でウイスキーの試飲をしちゃうほどのウイスキー好きばかり。そんな人たちがこのカウンターの前に集まって、お酒の話に花を咲かせる。そんな「濃いい」カウンターなんだそうです。
 たとえば白州18年が一杯500円など、ココではさまざまなウイスキーをほぼ原価で飲むことが出来るんだそうです。
 だから、たとえば飲み屋やショットバーの常連さんが集まって、バスを一台貸し切って、ちょっとした観光旅行を兼ねて蒸溜所見学にくる。そんな感じの人たちもけっこう多いんだとか。


 森深く水清き地、白州。
 この地を「ウイスキー作りの理想郷である」と考えたサントリーは、この地ならではの様々なウイスキー作りにチャレンジし、世界を唸らせ続けている、というわけです。
 白州蒸溜所はたしかに都会から遠くて不便ですけれど、この場所に蒸溜所を置いた理由がわかりました。
 どうでしょう、みなさんも一度、白州蒸溜所を見学してみてはいかがでしょうか?


「そうは言っても、山梨は遠いよね…」というアナタに。
 最後に、白州蒸溜所の産んだ「シングルモルト白州」を使った「森香るハイボール」の作り方のご紹介を。
 森に包まれた蒸溜所の産んだ「白州」らしさを生かしたハイボールです。

 ハイボールの作り方に限らず、水割りでもカクテルでも、割る時の基本は
「お酒が1:割るモノが3〜4」
 ね、簡単でしょ?
 もっと詳しくは、以前書いた「スゴいハイボール」の作り方の記事をどうぞ。

 普通のハイボールとは違い、ウイスキーには白州を、そしてレモンを使わずにミントを添えてあります。
 「青リンゴのような」とも言われるスッキリとした味わいの「白州」の香りが、ミントに引き立てられ、スッと炭酸とともにノドを通っていく…。そんな一品なのでした。