ーOOO-「カルチャーとカルチャーがぶつかるところ」…エル・デコ インターナショナル デザイン アワード 2010
もうハッキリ言い切っちゃいますが、この一週間だけは誰が何と言おうと 「秋は芸術の秋ッ!」 なのであります。
っつーことで、10月30日〜11月3日にかけて、東京ではデザインのイベントが目白押しなのであります。
大きなイベントは以上の3つです。そして、それぞれのイベントの中にも細かな催しが組み込まれています。
これだけ大きなデザインのイベントが東京で催される…ということは、世界の多くのデザイン関係者が東京に集まると言うことです。ですから、ほかにも各地でいろいろなデザイン関係のイベントが行われているんです。
なーんかこう、「ああ、文化の日なんだな…」って感じがしませんか?
そんな「芸術の秋!」の金曜日の夜。
原宿にあるアウディ フォーラム東京で「エル・デコ インターナショナル デザイン アワード」が催されました。
- 【ELLE DECOR】「エル・デコ・インターナショナル・デザイン・アワード」|エル・オンライン
- エル・デコ日本版が、今年のベストデザインを発表! -「エル・デコ デザインウォーク2010」
- Audi Japan > Audi Forum Tokyo
- Audi Forum Tokyo presnts EDIDA 2010 & ELLE DECO Design Galleryへご招待! | Audi Japan株式会社 | Fans:Fans(応募は終了しました)
「エル・デコ インターナショナル デザイン アワード」(以下EDIDA)は、その年のもっとも優れたデザイナーやデザインなど全12部門に送られる賞です。
そもそも「エル・デコ」は、世界25カ国で発行されているインテリアの雑誌です。毎年秋になると各国のエル・デコは、それぞれの国ごとに作品を選出します。ノミネートされた作品の中から、来春のミラノ・サローネで選考会が行われ、賞が送られます。
この夜発表になったのは、エル・デコ日本版が選んだ、今年のインテリアデザインのニッポン代表なのです。
エル・デコ日本版編集長の木田隆子さんは、こう語ります。
「日本のデザイナーが海外の工房で作品を作ったり、あるいは海外のデザイナーが日本の伝統工芸に挑戦しています。
カルチャーとカルチャーがぶつかるところで、とてもショッキングなことが起こります。
それは、とても素敵なことだ、と思います。
エル・デコ日本版は、『国境を越えているデザイン』の、非常に面白い印象的な作品をノミネートしました」
ということで、エル・デコ日本版が選んだ2010年のEDIDAノミネート作品を一挙にご紹介します。(以下長文です)
エル・デコ・ヤング・ジャパニーズ・デザイン・タレント
坪井浩尚
Hironao Tsuboi
1980年東京都生まれ。多摩美術大学環境デザイン科卒業後、曹洞宗大本山総持寺にて雲水として安居。2006年にデザインブランド「 100% 」の立ち上げに参画、現在まで同ブランドのデザインを手がける。'07年Hironao Tsuboi Studioを設立。
中村拓志
Hiroshi Nakamura
1974年東京都生まれ。隈研吾建築都市設計事務所を経て2002年NAP設計建築事務所設立。「 地層の家 」「 Danceing trees, Singing birds 」などが高く評価され受賞も多数。今秋10月には栃木県小山市に美術館「 録 Museum 」がオープン。
最初に発表されたこの賞は、エル・デコ日本版独自の賞なのだそうです。
「日本の建築デザインの果たす役割は大きい」と語る中村さん。(写真中央)
写真左の坪井さんは「即今」…「すなわちいま」というキーワードをあげ、「今に根ざしたこれからのデザインを作ることに邁進したい」とコメント。
バス・バスルーム用品部門
ネオレストシリーズ LE /トートー
NEOREST SERIES / LE ( TOTO )
欧州を中心に販売し高い評価を受けているシリーズ。LED照明付き洗面ボウル「クリスタルボウル」や浴槽「ルミニストバス」。その他トイレ、アクセサリーなどと共に空間として発表。
ワタシは以前ウォシュレットのブロガーミーティングに参加したことがあるので、今回のTOTOさんの受賞は身内が受賞したかのような親近感があって、感動しました。
(参考→ーOOO-ハリウッドスターもお気に入り!? TOTOウォシュレットの超ハイテクに迫る!)
「海外旅行に行っても 『トイレの便座があったかい』 とかって無いと思うんですね。だけど最近、ハワイのホテルのトイレにウォシュレットが導入されました。そのほか、アメリカや香港のホテルにも導入されつつあります。いずれ 『いいホテルのいい部屋には、ウォシュレットがある』 と言われる日まで、頑張っていきたいと思います」 と、TOTOの担当さんはコメントしました。
ベッド寝具部門で受賞した作品の担当者さんはこう語ります。
「本国でも今回の受賞を大変喜んでおります。私自身、ミラノサローネで接客をしておりましたときに、今回の作品は手応えがありました。いちばんエレガントなベッドではないかと思っております。来年、日本の市場に大きなニュースを届ける予定ですのでご期待ください」
あれ、コレ、最後の一文って、「新製品にご期待ください」みたいなニュアンスにもとれるし、「賞を取ります!」という宣言にも読めますね?
手書きでメモを取ったので細かいニュアンスが抜け落ちちゃったのですが、ここではひとつ「賞を取ります!」という宣言だと受け取っちゃいましょう! 勝手に応援しちゃいます!
テーブルウェア部門
上出長右衛門窯×ハイメ・アジョン produced by 丸若屋
Kamide Choemon - gama x Jaime Hayon produced by Maruwakaya
石川県の伝統工芸九谷焼の窯元、上出長右衛門窯と、スペインのデザイナー、ハイメ・アジョンがコラボした器。日本の物作りと海外デザイナーがタッグを組んだ好例。カーペット・床材部門
プレイング・ウィズ・トラディション/ストロベリーフィールズ・プロジェクト
Playing With Tradition (Strawberry Fields Project)
オランダ出身のデザイナー、リチャード・ハッテンが手がけた "伝統と遊ぶ" と題したラグ。データのダウンロードに失敗したかのような。途中で切れた模様がユニーク。
テーブルウェアでノミネートした久谷焼の作品は、日本とスペインの衝突です!
パッと見ると久谷焼の色合いに「ホッ」として見過ごしちゃいますが、しげしげ眺めると、やっぱこれ「いわゆる和風」とは全然違う絵柄だし、形だってかなり奇抜ですよね?
「本当にうれしい、言葉に表せない」(ハイメ・アジョンさん 右から2番目)
「たのしいコラボでした。日本人よりも日本人的なところがありました」(上出長右衛門窯さん 右から3番目)
「ハイメ・アジョンと窯の、素晴らしいコラボが出来ました」(丸若屋さん 右から4番目)
そしてカーペットは、伝統的な模様を新しい発想で再構成した作品です。これは「伝統的なもの」と「現代的なもの」の衝突と言えるでしょう。
「ここにいるだけで世界のトップにいるような気分だ」(リチャード・ハッテンさん 左端)
左端のプレゼンテーターはハッリ・コスキネンさん。マリメッコのデザイナーとして、EDIDAデザイナー・オブ・ザ・マンを受賞したことがあるそうです。
「プレゼンテーションを通して、こうして人と人が繋がっていくんですね。わたしはとても感動しています」と、木田編集長。
そして今回ノミネートされた南村さん(写真左から2番目)は、こんなコメントを。
「このタイミングで受賞したことがうれしくて、仕事中に涙を流しました」
デザイン関係のパーティーだからすごくきらびやかで、ついついそちらに目が奪われて、「ああ、こういうのがフツーな世界なのかなぁ」とか思ったりしちゃってたんですが、んなこたぁ無いんですよね。
とても大事な賞で、だからこそ華やかなパーティーなんですね。
デザイン関係のお仕事は、一見華やかな…でも裏に回ると地味な部分も多い仕事。線を引いたり、モノを作っては壊し、ホコリにまみれ…。
そういう日々の苦労が報われる瞬間。
一生懸命頑張ってきたことが報われる瞬間。
こうやって写真を眺めていると、受賞者のみなさんの笑顔がとても印象的でまぶしくみえるんですよね。
そして受賞がうれしいのは、それが「キチンとした賞」だからで。
選考過程や選考理由がキチンとしていること。
受賞した人たちがその後、大きく羽ばたいていること。
そういった、EDIDAの積み重ねてきた歴史や重みが、シロートである私にも伝わった瞬間でした。
キッチン・キッチン用品部門
チェッカーズ/アルマーニ/ダダ
Checkers ( ARMANI / DADA )
アルマーニ / カーザとダダ社の共同で誕生したキッチン。黒と白を用いた格子のデザインが、アルマーニらしいラグジュアリーな空間を演出する。アウトドア家具部門
プレイ/デドン
PLAY ( DEDON )
ドイツのブランド、デドンは、フィリップ・スタルクと組んだラグジュアリーなシリーズ「 PLAY 」で勝負。無駄のないフォルム、シックなカラーリング、スタッキングできる点が大いに評価された。壁紙・塗料・壁装材部門
ポンティ/オズボーン・アンド・リトル
PONTI ( OSBORNE & LITTLE )
イギリス生まれの人気ファブリック・壁紙メーカー、オズボーン&リトル。展示はアンティークの貴金属のような色のストライプ柄が印象的な「 PONTI 」。
アルマーニのキッチン!? と大変驚いたのですが、これはアルマーニの新しいチャレンジなのだそうです。
「アルマーニはファッションだけでなく,家具の世界でもアクセルをふかしてまいります」と、アルマーニの担当さん。
さて、アウトドア家具部門は今回からの新設部門。
フィリップ・スタルクの名を知らなくても、「浅草の金ぴかのビル」のことは誰もが知っているでしょう。あの金ぴかビルをデザインしたのが、スタルクなのです。
(参考→ーOOO-浅草の巨大な黄金色のアレについて)
「はじめてできたアウトドア家具部門の第一回目にノミネートされましたことを、大変うれしく思います。今回の作品は、スタルクが頭の中に描いたデザインをそのままCADに起こして、そのまま金型を起こしています。そこに、手編みの布をかぶせたものなのです」と、デドンの担当さん。
壁紙部門は、会場に受賞作品の実物が展示してありました。
表面が立体的に波うち、キラキラしていて美しいですね…と思ってたら、これ、まったいらだったんですって。うそ、ホントに?
「3Dメガネを使わないでも立体に見える壁紙なんです」と、担当さん。
飛び出す!という立体感ではなくて、大きな凹凸があって、光のハイライトが動く…という感じで、とても上品な壁紙でした。
深沢直人さん(左端)の名前は知らなくても、その作品を知る人は多いでしょう。
auの携帯電話を多く手がけています。最近だとIS01、古くはINFOBARなどなど。
それから、無印良品の製品も多く手がけておられます。
「北欧のイメージのシンプリシティを突き詰めた形に感動しました」と、木田編集長。
深沢さんはこの作品にこんなコメントをしています。
「そんなにあたらしい形をしているわけではないけれど、それがそのまま製品化されたことがうれしいし、それが受賞したこともとてもうれしいです」
授賞式に表れたのは三宅さんではなく、moooiのデザイナー、マルセル・ワンダースさんです。
マルセルさんは、今度発売されるiidaのスマートフォンのデザインを手がけるそうです。
KDDI、「携帯のレントゲン写真をイメージ」したX-RAYやiidaスマートフォンをお披露目 - RBB TODAY )
「若手をピックアップして育てようという心意気に、一票入れさせていただいた」と、木田編集長。
これに対し、マルセルさんは、こんなコメントを。
「この賞に関しては、三宅さんに与えたいと思っています。三宅さんのデザインを私のフィルターを通して世界に広げていきたいと思います」
コメントの中では「私の尊敬する三宅さん」という発言があったり、スクリーンに写るミヤケライトを指さして「こっちに注目!」とアピールしたりしていました。
吉岡徳仁さんはパッケージデザインから空間デザインまで、様々なジャンルで活躍するデザイナーです。
その多くの作品で使われるのが、透明なアクリルです。
今回の椅子も、吉岡徳仁さんらしいデザインと言えるでしょう。
「ミラノで見た時に美しい椅子だなぁと思いました。そのときの印象を受賞の決め手としました」と、木田編集長。
吉岡徳仁さん(左から2番目)はシャイな方のようで、「本当にありがとうございました」と、言葉少なです。
しかし吉岡徳仁さんの手がけた作品は大変多く、また展示会などでの空間デザインのような大きなモノを手がけることも多いので、興味がある方はググってみてはいかがでしょうか。
ここで紹介するのは、カリモクのニュースタンダードとして100%デザインから発表された作品です。
「日本人と外国人混合のチームを作って、素晴らしい作品が出来上がりました」と、木田編集長。
ご本人(左から2番目)は気負うところもなく、
「今回、ヤングデザイナーに選ばれて良かった。つまり私はまだヤングだ、ってことですよね」と、コメント。
ステージの上でプレゼンテーターのデザイナーさん(左端・名前失念)と話し込んでいたのが印象的でした。なかなか会う機会のないデザイナー同士、意見の交換でもしていたのでしょうか?
今回展示の「MONZA CHAIR」は、木とプラスチックの異素材を組み合わせてあるのが特徴です。
木を曲げたのではコストがかかる部分にプラスチックを使うことで、リーズナブルな製品に仕上がっています。
「今の時代を考えた、シンプルでうつくしいデザインを作り出しています」と木田編集長。
ちょっとググってみると、グルチッチさんは今回の出展のような作品だけではなく、もっと直線的な、スッキリしたデザインの作品が多いようです。
授賞式ではグルチッチさん本人の代わりに代理人の方が登壇、そしてプレゼンテーターとして深沢直人さんが再登壇して、「デザインがどんなに人を元気にするか、デザインでもっともっと日本を元気にしたい」とコメントしました。
と、以上がエル・デコ日本版が選んだ、EDIDAノミネートの一覧でした。
駆け足で紹介してみましたが、いかがだったでしょうか?
最後にワタクシ的な感想を少し。
よく「日本が元気がない」「日本人が元気がない」と言われていますが、こうしてずらりと「元気なニッポン」を見ることが出来たのはうれしいことでした。
決して日本にしがみつくことなく、しかし「日本ならでは」というこだわりを武器に、世界と組んでやっていく。そういう「サムライたち」をたくさん見ることが出来たのが、収穫でした。
今回の展示物は、原宿のアウディフォーラム東京で無料で見学することが可能です(11月7日まで)。
それからこのイベントに限らず、せっかくの「芸術の秋!」ですから、さまざまなデザインを見に、あちこち出かけてみてはいかがでしょうか。