ーOOO-「味覚の秋」に関する一考察

 実家で晩ご飯を食べたのだが、ちょっち魚が傷んでる臭い…。うう、父上、これはちょっち…。
「はっはっは、ケチって50%オフの魚を買ってきて、ほっておいたからなぁ」
 それはけっこう古くてヤバいのでは…。
「でもな、お父さんが子供の頃は、こんなの普通だったんだよ。魚ってのは臭うモンだと思ってたんだよ」
 電気冷蔵庫も珍しいみたいな時代だったから?
「それもあるけどな。とにかく冷凍保存ってのが無かったんだよ。八戸の港から魚を箱に氷付けにして、十和田までトラックで運んでくるんだけどな。氷がどんどん溶けるから、荷台から魚臭い水がバシャバシャ落ちてくるし、着いた頃には氷はとっくに溶けちゃってぬるくなってるんだよ」
 はー!
「魚から傷んだ臭いがするんだけど、それでも魚が食卓に並ぶのは珍しいことだったから、ごちそうだったなぁ」
 ふーん、めちゃめちゃしょっぱい塩漬けの鮭がありがたがられるのは、当時の保存食だったからなのかな。
「そういう部分はあるなぁ。ああ、それから冬になるととにかく寒いから、家の軒先に魚を吊しておくだけで凍るから、そういう冷凍保存の仕方もあったな。新鮮な生の魚が食べられるのは、春先と秋の一時期だけだったなぁ」
 あ、そういえば「味覚の秋」っていうじゃない? それって、夏は暑さが厳しいから食べ物が傷みやすい季節だけど、秋は涼しくなってきて傷んでない新鮮な食べ物が食べられるようになるよね。「収穫の秋」と併せて、秋は食べ物がより美味しく感じられる季節だった、ってことじゃないかな?
「それもあるのかもなぁ」
 でもこの魚はやっぱり傷んでるよ?
「はっはっは」