ーOOO-オレと爆弾処理

 最近は秋葉原に行くと、アトレにあるスタバでひとやすみすることが多い。こないだの日曜日は特に寒かったし、イベントで難しい話を聞いて頭がこんがらがっていたから、暖かい場所でちょっとくつろぎたかった。
 ここは眺めがよいお店なので、窓から駅のホームを見るのも良いし、反対側の窓から線路や街を見るのも良い。あと電源が使える席があるのがうれしいのだ。景色を楽しみつつ、ガトーショコラをちまちま崩しながら、ブラックのホットコーヒーを飲む…うーむ、幸せだ。
 しかしその幸せは、長くは続かなかった。
 なんか、トイレに行きたい…。
 それも、大の方…。
 まだガトーショコラは半分残っていたし、コーヒーはたっぷり残っていたので、あわてて席を立つこともあるまい。たかをくくって、ゆったりした気分に浸ろうと努力する。
 んで、立ち上がった時。
 思ったよりも差し迫った波が、オレを襲った。
 しかし、あんまりあわてて席を立つのも変だ。あくまでも自然に。トレイの上のゴミは分別してキチンと捨てます。あわてないあわてない。
 で、スタバを出てトイレを目指すと、そこには女子トイレしかなかった。フロアマップを確認すると、女子トイレは全ての階にあるのに男子トイレは2階にしか無いようだ。女性向けの小洒落た店に潜む、恐るべきワナ!
 ダッシュしたかったのだが、差し迫った状況はピークに近付き、むしろダッシュすると大変なことになりそうだ。
 そろそろっと移動してエスカレーターに乗ろうとすると、元気いっぱいのチビっ子が、すれ違いざまにオレのカラダにタックルをかましてくる。おうっと、危ない危ない…お嬢ちゃん、オレに触っちゃいけないぜ、オレは今から爆弾を処理しに行く途中なんだから、ナ。
 2階にしかない男子トイレに行くと、そこにはたくさんの人が行列を作っていた。トイレが一カ所しかないから、こうなるわなぁ…。
 こういうトイレ行列って女性の人は日常茶飯事なのかもしれないんですが、男性は、というかワタシはそういうの慣れてないもんですから…。付け加えると男性トイレの場合、並んでるのは大きい方の用事を済ませようとする人ばかりなので、みんなやたらと時間がかかる。
 よそのビルに行って用事を済ませようかとも思ったけれど、いよいよ事態は切迫していて抜き差しならず、ワタシは動けなくなっていた。
 どんどん用事を済ませて立ち去っていく小の方。大は小を兼ねるが小は大を兼ねない…。私は目の前にあるトイレの個室の扉をにらみ、必死に耐えた。
 なかなか中から人が出てこない。どうなってるんだ…。人によってはなかなか出ないタイプの人がいて、10分くらい気張って事態を達成することもあると聞きますが。しかしワタシは通常時はワリとスピーディなタイプで、着座するとスッと、ドーンと出るタイプだ。
 というか、座ったらドーンと出したい。
 出したいっ、ドーンと!
 大きな波が私を襲う。私はただ、ジッと耐えた。
 そのうち奇妙なことに気がついた。右の扉と左の扉、そのうちの左の扉だけしか人が出入りしていないのだ。右の扉の向こうで何が起こっているのか? 時々カラコロと紙を巻く音がしたり、水が流れたりするのだが、しかし中から人が出てくる気配がない。中で何が起こっているんだ?
 余計なことを考えているうちに、恐るべき大きな波は引いていった。
 良かった…。第一波はかわしきったのだ!
 しかし波とは寄せては返すもの。第二の波がくる時は、もっと大きな津波のような事態が襲ってくるだろう。こらえきれるだろうか…。そうなる前に、早くッ!
 と、ここで左のドアが開いた。ようやくワタシの番が来た!
 着座して、ふんばる。
 しかし、出ない。
 大きな波が引いていった時に、引っ込んでしまったんだろうか?
 バカなっ!
 お腹とお尻に大きな力を入れたり緩めたりして、やっとの事でひねり出したソレは、思ったよりも尻ごたえのない「小さな大」であったということでした。