ーOOO-レモン丸ごと入ってます!だけど果汁の表記がないわけは?…サントリー -196℃製法 ゼロドライ

 お酒と言えば「とりあえずビール!」という時代は過去の物になりつつありますが、それでもやっぱりビールはまだまだ人気ですよね。
 じゃあビールの次に好きなお酒は?とアンケートを取ると、チューハイと答える人が多いのだそうです。チューハイは全年代にわたって人気があり、20代に限って言うならビールを抑えてチューハイが人気の1位なのだそうです。
 実際に家庭で飲まれるお酒のPOSデータを調べると、2010年はビール類(発泡酒や新ジャンルを含む)が約68%と圧倒的なのですが、その次が缶チューハイ11%、焼酎10%、清酒6%…と続きます。また、ビールの出荷はここ数年減少を続けていますが、缶チューハイは過去10年で出荷が1.7倍になったそうです。
 缶チューハイ、人気で元気なジャンルなのですね。
 
 さてさてワタクシ、サントリーさんが先日リニューアルして発売した缶チューハイ「ゼロドライ」「ストロングゼロ」のイベントに参加してきたですよ。
 なんといってもその秘密と特徴は、-196℃製法にあるでしょう。「知っても知らなくてもおいしい!」ということなんですが、せっかくだからおいしさの秘密を知っちゃいましょう!

-196℃製法の誕生秘話

 この-196℃製法、そもそもの開発の経緯の話は、居酒屋の飲み会にさかのぼります。

 サントリーさんは開発部と営業部といった各部署の垣根を越えて、みんなでわいわい集まって市場調査の名目で居酒屋に飲みに行ったりすることがあるんだそうです。
 っていうか、ソレ、仕事とはいえ楽しそうですよね。…いいなぁ。


 そんなあるとき、「自分の手で絞ったチューハイは、どうして美味しいんだろう?」という疑問が浮かんだのだそうです。
 ヒントは、果物を絞った手に付くフレッシュな香りにありました。 

 果物を手で搾ることで果物の皮(果皮)からフレッシュな香りが立ちのぼり、それが生搾りのチューハイを香り高くしていることが分かりました。
 調べてみるとうまみ成分は、果汁や果肉だけではなくて、果皮にも多く含まれていることが分かりました。

 果皮に含まれるうまみと香りの成分を、まるごと取り出すにはどうすればよいのか?
 ここでたどり着いたのが、果物を丸ごと液体窒素で瞬間冷凍して粉砕し、お酒に漬ける…という「-196℃製法」だったのです。

 一般の果汁チューハイの場合は、果物のジュースをアルコールで割ったような、ジュースっぽい風味になります。
 しかし-196℃製法の場合、皮に含まれる香りやうまみ…時には苦みの合わさった、複雑な味わいを引き出すことが出来るのです。

 ところでワタシは以前スターバックスのコーヒーセミナーに行った時に、「味を感じる要素の中で、香りが9割だ、とも言われているんです」という話を聞いたことがあったので、「生搾りチューハイの美味しさの秘密が、香りにあった」というのは大変うなずける話でした。

-196℃に凍ったレモンを見てみよう

 ではここで、液体窒素でレモンを凍らせるところを見てみましょう。
 ボウルの中に、まるごとのレモンとスライスレモンを入れて…。

 …だばだばだばっ、と液体窒素を入れていきます。
「危険ですから近寄らないでくださいね!」
 静まりかえる会場。

 レモンの周りからはボコボコボコーッと泡が立って、まるでレモンを天ぷらにしているみたいです。
「これは水分が泡になって表面に出てきているんですね」
 凍らせることで水分が飛んで、成分が濃くなるって事もあるかもね?

 レモンの輪切りはあっというまに真っ白になりました。
 ここでガッツーンと衝撃を加えてやると…。

 ご覧のように、一瞬で粉々になりました。
 凍らせることで果物はモロくなり、果皮と果実の区別無く粉末化するのが容易になります。梅やレモンの場合は、タネごと粉末化して、成分を抽出するのだとか。

 まるごとのレモンが凍って、表面にヒビが入っています。中心部と果皮の部分の収縮率が違うということかなー、と。
 絶対零度に近い-196℃で凍らせることで、物体の分子運動が止まり、風味などの劣化がおこりません。というか、劣化が進みません。

 で、粉砕したレモンのパウダーがこちら。非常に冷たく凍っているのに、鼻息で舞い上がってしまうほど細かいパウダーです。
 さっそく味わってみます。
 ぱくり。


 …苦い!?

 酸っぱいのかと思いきや、まず「苦い!」。
 そして、香りが高い。レモンの香りが鼻に抜けていきます。
 それから最後に、酸っぱい。そんな感じでした。
 サントリーの方も「正直、おいしいモノではないですよね…」とおっしゃってました。
 パウダーが溶けるとこんな感じ。ドロッとした黄色い液体です。
 レモンの果肉だけでなく、皮もタネの部分もひっくるめてパウダーにしてあるそうですが、舌の上にザラつき感が全くなく、ドロッとして渾然一体になっていました。

 で、このレモンパウダーをウォッカに漬け込み、風味や旨味をまるごと溶かし込むんだそうです。果実は舌の上にまったく残らないくらい粉砕されているので、溶け込む成分も多そうですよね。ちなみにこのパウダーというか果実の部分は、製品にする前に漉して取り去ってしまうんだそうです。
 
「皮ごと使う」というと、気になるのが果物の防カビ剤などの問題ですね。
 しかしサントリーさんは農家と直接契約し、防カビ剤の不使用を徹底しています。
 ここでポイントになるのはやはり「-196℃製法」です。果物を凍結させ、ウォッカに漬けてしまう製法なので、こうなればそれ以上品質が劣化する恐れはありません。
 皮ごと使う「-196℃製法」だからこそ防カビ剤を使った果物は使えませんが、逆に果物を丸ごと凍結してウォッカに漬ける「-196℃製法」だからこそ防カビ剤を使わなくても安心なのです。

レモン丸ごと入っているのに、果汁の表記がないわけは?

 ところでゼロドライの缶を眺めていると、「果汁何%使用」といった表記がないことに気がつきます。これはいったいなぜなんでしょうか?
 実はこれも「-196℃製法」らしさの一つなんです。
 先に述べたように、-196℃製法ではレモンをまるごと凍結粉砕してウォッカに漬け、それを漉してチューハイを作ります。
 果実としては、確かにお酒に丸ごと入っている。だけど皮も種も含まれている。しかも、それを最後に漉してしまう。
 この果物を漬けたお酒…「浸漬酒」は、果汁何%と数えたらいいのか、よく分かりませんよね?
 だから、あえて「果汁何%使用」とは表記してないけれど、「果汁0%」とも書いてない。ということなんだそうです。


 ちなみにアルコール5%の「ゼロドライ」では果汁の表記がありませんが、アルコール8%の「ストロングドライ」は浸漬酒とレモン果汁3%をプラスしたダブルレモン製法となっています。レモンの香りをより強く楽しむことが出来るので、飲み比べてみてはいかがでしょうか。
 
 ちょっと試飲してみたんですが、「ゼロドライ」は-196℃製法ならではのレモンの香りの高さと、ホロッとした苦みがあって、奥深い味わいになっていました。
 サントリーでは-196℃製法だけでなく、フルーツジュースのような味わいの美味しさを追求した「カロリ」「ほろよい」などもあるので、飲み比べてみてはいかがでしょうか。
 というか、飲み比べるとハッキリ違いがわかります! あなたの好みに合わせて、お好きなチューハイを楽しんでみてはいかがでしょうか。