ーOOO-豆まかれ
今日は節分でしたな。みんな、豆まいたか! 恵方巻食べたか!
弊社の近所のお寺では、節分会が行われました。
ところで、お寺の参道でだんご屋を商っている弊社ではありますが、節分はけっこうヒマなのです。なんでかっつーと、節分って言えばやっぱ浅草寺とか成田山が有名なので、ウチの近所に観光客のバスはやってこないから。あと、豆まきの最中に参道を歩いてるお客さんはいないわけで、その面から見てもヒマ。
んで、会社の何人かで連れ立って、ちょっくら仕事を抜け出して見に行ったのでありました。
節分会っつーのは、舞台の上から豆をまく人にとっては「豆まき」だけど、豆を拾う観客の側からすると「豆拾い」あるいは「豆まかれ」と呼ぶべき状態になるんですな。
うちのお寺の節分は、舞台の上から豆を小袋に小分けにしたものをまくのですが、このとき袋に「あたり」と書いてあったら、参道の商店街で何かの景品をもらうことが出来ます。当たりつきの節分会なのですな。
「アレ、1度でいいから豆をまく側に回ってみたいな…」
「スゲー楽しそうですよね、池の鯉にエサをやるみたいな感じで」
そんなことを言いながら、豆および景品をゲットする気満々のワレワレ。とそのとき、後ろから人混みをかき分けてスーッとおっちゃんがやってきて、前の方に通り過ぎていった。あれよあれよという間におっちゃんは最前列に顔を出す。
「見たか、アレ」
「きっと、豆拾いのプロっすね…」
豆がまかれる前から、すでに勝負ははじまっている…。
豆まきはなかなか始まらず、舞台の上では、鬼と神様の使いが寸劇を繰り広げています。練習時間が足りないのか、なんかこうピンとこないし、何やってるんだかわからない。ありがたいやらありがたくないやら。
と、突然豆まきがはじまった!
「鬼はー、外!」
まかれる豆!
「福はー、内!」
ワーッと言う歓声!
人の波は右に左に揺れる!
でも豆がこっちに飛んでこない…。
あっ、豆が飛んできた! けど、届かない…。
ザラーっと大量に地面にまかれた! 背の低い子が拾ってる…。
目の前の人がブンブンと帽子を振って、次から次へと豆を取っていく。
こっちにも豆キター! 手に当たった! でも、はじいた! 他の人が取ってしまった…。
豆はドンドン、私の手をすり抜けていく。
絶望的な気持ちになりながら、思い出す。
あ、オレ、運動音痴だったっけ…。
ふと、中学生の頃の体育の時間を思い出した。
バレーの時間に、どうしてもボールに触れなかった自分。
テニスの時間に、ボールがラケットに当たらなかった自分。
サッカーの時間に、なるべくボールが飛んでこない場所に行って無駄話をしていた自分。
そんな自分には、節分だからといって、福が飛んでくるはずがないのだし、それをキャッチできるはずもなかった。
節分の豆まきの喧噪の中でワタシは、体育がからっきしダメだったあのころの自分と向き合ってしまったのだった。
あー、負けだ、負け!
そして、節分は終わった。
「どうでしたかセンパイ! オレは三個キャッチしたけど、当たりがなかったッスよ! ワッハッハ!」
あー、いやー、オレは運動神経が鈍いから、一個もとれなかったな…。
「何スかセンパイ! じゃあオレの福豆を一個、分けてあげますよ!」
ということで今年のワタシは、後輩の福を一個、おすそわけしてもらったのだった。