ーOOO-うすらデカいラジオ
春。それは和菓子屋が多忙な季節。
3月3日のひな祭りには桜餅。お彼岸にはおはぎ。4月はお花見だんご。5月5日は柏餅。クリスマスケーキやバレンタインチョコほどではないけれど、春は季節商品が売れるのです。
忙しいので黙々と仕事。疲れてくるとバカ話も思い浮かばなくなり、会社の空気が悪くなる。
というときに大事なのが、ラジオなのでした。
テレビと違って、ラジオは仕事の手を止めずに楽しむことが出来る。コレ大事なトコ。
聞き慣れてくると、番組のコーナーの進行やCMの時間で、今が何時なのかわかる。時計代わりに聴くことが出来る。コレも大事なトコ。
会社のウチの部署で使っているラジオは、馬鹿でかいラジオ。
以前使っていたラジオが壊れた時に、会社の後輩君が「家で使わなくなったから」と持ってきてくれたモノ。
とにかくデカい。まずスピーカーがデカい。CDプレイヤーが付いていて、その分奥行きが深い。さらにカセットが再生できる。もうてんこもりで、うすらデカい。
90年代の終わり、ラジオの時代は終わりつつあったけれど、それでもCDを聴くことやテープにダビングすることが若者のアコガレ的娯楽の中心だった時代。このラジカセは、音をキレイに再生しようとする装置の90年代的到達点みたいなCDラジカセなのだ。
だけど今そのラジオはボリュームが壊れていて、音量が不安定だ。狙った音量に定まらない。
逆に言うと、壊れているからこそ後輩はラジオをウチの部署に提供したのだ。
ではなぜ、そんな壊れたラジオを使っているのか?
それはひとえに、音がいいからだ。
他所の部署でもラジオを聴いているのだが、そこのラジオも壊れてしまって、あるとき新しいラジオを買ってきた。
で、新しいラジオの音を聴かせてもらったのだが、どうも音が良くない。
他のメーカーの商品に返品交換してみたけれど、音質に大差なし。それどころか、「いまはラジオは入らないですよ、こんなもんですよ」といわれる始末。
いまはラジオの時代じゃないから、ラジオの回路は簡素化されてコストカットの対象になってるらしく、音質や受信感度にこだわっていないみたいなのだ。
壊れてるけど音のいい、ウチの工場のうすらデカいラジオ。
大事に使っているのだが、最近は選局ツマミも調子が悪くなってきた。
工場は湿度が高いのだが、そのせいで機械の内部にさびが進み、調子が悪くなる。チューニングが狂ってきて、音が小さくなる。
チューニングのツマミとボリュームのツマミ。二つのツマミを調節して、ちょうどいいところにあわせないと番組が聞こえない。
だから、仕事中にラジオが聞こえなくなってくると、ラジオの前で二つのツマミをソーッとソーッと動かして、ルパン三世が金庫破りしてるみたいな気持ちになりながら番組を聴いている… そんなワタクシなのでした。