ーOOO-畜生道

 ウチから最寄りの駅までは、クルマがすれ違うのが困難な、狭くてクネクネした一本道が多いんですよ。
 で、今朝の通勤途中のこと。
 見知らぬオッチャンがゆーっくり自転車を漕いで、道の真ん中をふさいでたんですよ。コッチは急いでるんだけど、アッチはふーらふーら左右に進路を変えるから、追い越しづらい。仕方がないから、オッチャンの後ろについて、ゆっくり自転車を漕いでたんですよ。
 そしたら、オッチャンがブツブツ言っている。
 よく聞くと、
「…チクショウ。…チクショウ!」
 なんか、怖くなって。
 もう、近づけないし、まして追い抜くのも怖い。刺激しちゃいけない気がして。
 で、道が左右に分かれるところで、オッチャンと反対の方向にハンドルを切って、自転車を4→5→6とシフトアップ。全力ですっ飛ばして駅に向かったですよ。
 二つにわかれた道は、次の交差点ですぐに一つに戻った。交差点に先に飛び込んだワタシは、見事にオッチャンの前に出た。
 さあ、このまま自転車を漕いで駅へ…と思ったら、後ろから


「チクショウ! チクショウ!」


 ゾッとした。全身の毛穴が開くような恐怖。
 もう振り向けない。
 ワタシは全力でペダルを踏みつけ、自転車を漕ぐ。どんどん距離が離れていくはずなのに
「チクショウ! チクショウ!」
という声が耳から離れない。
 とにかく全力で駅の駐輪場に飛び込み、走ってホームに向かい、ちょうどやってきた電車に飛び乗ったのでした。


 なんだったんだろーな、アレ…。ただの酔っぱらいなのかな…。
 久々の恐怖体験だったのでした。