ーOOO-しゃぶしゃぶとわたし

 しゃぶしゃぶの語源とは何であるのか?
 しゃぶしゃぶの語源は「薄切りの肉をお湯にしゃぶしゃぶ、とくぐらせる様子が語源である」と聞いた。


 しかしここでワタシは問い直したい。
 あの薄切り肉をお湯の中で左右にくぐらせる様子を、はたしてあなたは「しゃぶしゃぶする」と表現できるだろうか?
 ワタシがあの行為を擬音語で表すなら、「ちゃぷちゃぷ」「ちゃぽちゃぽ」、静かで丁寧な人なら「スーッ」とか「スッ、スッ」「さっ、さっ」「シャッシャッ」、やや行儀の悪い人なら「しゃばしゃば」「びちゃびちゃ」「ばちゃばちゃ」といった感じか。
 どれほど頭をひねっても、あの行為を擬音語で「しゃぶしゃぶする」とは表現できないのだった。
 ここであえて、あの行為を「ちゃぷちゃぷする」と定義づけよう。とするとあの料理は「ちゃぷちゃぷ」と呼ばれるのだ。
「特選和牛ちゃぷちゃぷ
 台無しだ。どれほど高級であろうとも、まったくダメになってしまう。では静かで丁寧な言い回しにすればどうか。
「黒毛和牛スッスッ」
 まったくダメだ。


 ここにいたってワタシはこう考える。
 「しゃぶしゃぶ」という擬音語は、ほとんど使われたことのない新しい擬音語で、それゆえに「しゃぶしゃぶする」という単語からは肉をお湯にくぐらせる以外の行為が思い浮かばないのではないか、と。
 言い換えると、しゃぶしゃぶするという擬音語からあの料理の名が決まったのではなくて、あの肉を湯にくぐらせる行為に「しゃぶしゃぶする」という全く新しい擬音語を定義づけた人がいたのではないか、ということだ。


 あらためて語源を調べてみると、こうあった。

 この料理が「しゃぶしゃぶ」として世に出たのは昭和27年のこと。永楽町スエヒロ本店の三宅忠一氏によって考案されたものでした。
 当時スエヒロでは、従業員がタライの中でおしぼりを洗っていました。それを見ていた三宅氏は、おしぼりをタライの中ですすぐ様子とお肉を鍋のお湯にくぐらせる様子とがよく似ていると思い、おしぼりをすすぐ時の「しゃぶしゃぶ」という音を料理の名前として命名したのだそうです。

しゃぶしゃぶ由来

 ”おしぼりをタライの中ですすぐ「しゃぶしゃぶ」という音”!
 えー、それもまた「しゃぶしゃぶ」という感じからはほど遠いような…。
 ワタシ的語感だと、おしぼりをタライの中ですすぐときは「じゃぶじゃぶ」「じゃばじゃば」「じゃぼじゃぼ」という感じかな…。やはりそこからしゃぶしゃぶという単語を思いつくのは難しい。
 ということで、

  • おしぼりをタライの中ですすぐ音から「しゃぶしゃぶ」という単語を連想したヒトはエラい。

 そして、スエヒロは大阪のお店なのだそうですが、

  • ひょっとして関西では「しゃぶしゃぶ」という擬音語をよく使うのだろうか?
  • 関東と関西で、同じ行為に対する擬音語が異なることもありうるかもしれない(擬音語にも方言があるのかもしれない)

 関東ではバカ・関西ではアホという言葉を使うように、擬音語でも地域によって当然違いがあるのでしょうし、ソレを調べるのも面白そうだなーと思いました。


 しかし、しゃぶしゃぶの話からずいぶん遠くに来てしまった。
 だけどこの日記を書く前は、ホントはユッケのことで頭がいっぱいだったんじゃよ?