ーOOO-「プリンセス トヨトミ」と、大阪アンダーグラウンド

 こないだ映画「プリンセス トヨトミ」についてちょっくら書いたわけだが、さらに考察を。
 ひょっとしてあの映画は、大阪の「アンダーグラウンド」とか「差別」にまつわる物語だったのだろうか…、と思ったらめっぽう面白く感じられてきた。
 と書きつつ、ワタシは関東より西に行ったことがほとんど無いので、大阪のアンダーグラウンドについて詳しいわけではないのです。細かい部分で勘違い等の指摘がありましたらコメント欄でヨロシクです。


 最終的には大阪全体を巻き込むような出来事が起こるんだけど、舞台になっているのは大阪のほんの一部分だけ。で、そこいらへんがワタシは「スケールがちいさいなー!予算がなかったのかな?」と思っていたんだけど。
 でも、あの舞台になっていたのは新世界、ジャンジャン横町、通天閣。あそここそが、映画のストーリー的にも、現実の大阪的にも、アンダーグラウンドへの入り口、と。


 あの映画の中で、ジャンジャン横町でお好み焼き屋を営んでいる男の正体は、大阪国総理大臣だった、と。
 で、このお好み焼き屋というのを深読みすると、テキ屋的でもあり、「豚玉」などなど肉にまつわる職業でもあり、映画の中では「アチラとコチラの境目にある商売」の暗喩だったのかな、と。
 アチラとコチラの境目に立つ男が、大阪国総理大臣…アンダーグラウンドのボスである、と。


 映画に出てくる「財団法人OJO」であれ、「大阪国」であれ、実際にどんな活動を行っているのかは描かれず、よく分からない組織だ。
 あえてワタシが言葉にするなら、「自分たちは産まれながらにそういう血を受け継いでいると言うことを、子供たちに伝えつづけること」が、彼らの目的らしい。
 彼らは自分たちの出自や血に誇りを持ちつつも、そのことを彼らは隠して生きつづける。そのことは大阪に住む者なら知らぬ者のない、公然の秘密。
 彼らは中央政府に従わないそぶりを見せつつも、直接戦い合うことは避ける。地下組織である彼らの勢力は広くに及び、地元の警察は全てその配下である。のみならず、その血を引いた者が出自を隠して霞ヶ関に潜入し、広くパイプを張り巡らせている。
 その配下には拳銃を所持する者もあり、時に銃撃が行われることさえある。彼らはそういった暴力的殺人的行為を行う者を内包した組織なのである。そしてその行為をとがめる者はおらず、「誰が犯人なのか?」ということを捜査するものもいない。絶対的な圧力を持ち、そのとき何が起こったのかはマスコミで報道されることもない。
 銃口を向けられた者は口をつぐみ、真実は闇に葬られ、過去数百億円にわたる使途不明金は、闇の組織が生きながらえるために使われ、溶けていくのだ。


「自分たちは産まれながらにそういう血を受け継いでいると言うことを、子供たちに伝えつづけること」が、彼らの目的らしい…と書いたのだが、そこには「親がそのことを子供たちに伝えなければ、子供たちはそのことを知らずにオトナになっていくのに」という側面があり、しかし彼らはそのことを子供たちに伝えることだけが目的の組織であるから、その連鎖は止まらないという悲劇を内包しているのであった。


 まあそんなふうにテキトーに考えていくと、
「あんな細い扉の向こうに、どうやって車いすで入ったんだろうか?ってか、あの急な階段を、どうやって車いすで?」
とか、
「真っ赤に燃え上がった大阪城は何だったの? 主人公の心情表現? それとも、単なる予告編対策?」
とか、そういった部分はほんとうに些細な謎なので、まあいいじゃないですか。
 と、ココまで書きつつも「やっぱし何も考えてない映画なんじゃないのかなー?」という気持ちをぬぐえないワタクシなのであった。