ーOOO-安い!明るい!メガネが軽い!偏光式3Dテレビの世界 … LG「CINEMA 3D」

 3Dテレビと言えば「高い…」「画面が暗い…」「メガネが重い…」
 しかしLG電子の"CINEMA 3D"は
「安い!」
「画面が明るい!」
「メガネが軽い!」
と、ネガティブなイメージを打ちこわす新製品だったのです。
 
 さてさて、3Dテレビをおととしから追っかけている当ブログ。
 昨年の発売当初は高嶺の花だった3Dテレビなのですが。
 しかし、みなさんご存じNintendo3DS裸眼立体視ですし、いまやスマートフォンやデジカメ、フォトフレームなんかにも裸眼立体視の機能が付いちゃったりして、3D映像は身近なモノになってきてますよね?
 劇場映画もけっこうな割合で3D上映が行われています。
 昨年を「3D元年!?」と呼んだ当ブログなのですが、いよいよ普及期が来るのかな、夜明けが来るのかな? なーんてね。
 …だけどまだまだ3Dテレビは高いし。3Dのブルーレイの映画も少ないし。
 3Dテレビが高くて売れなければ、3Dのコンテンツは売れないから発表されないし。3Dのコンテンツが発表されなければ、3Dテレビは売れないから安くならないし。そんな負のスパイラルに陥っているわけですが。
 しかしLG電子の"CINEMA 3D"は、先にも述べたように「安い!」「メガネが軽い!」「画面が明るい!」と3拍子そろっているわけです。コレをどうやって実現したんでしょうか?
 実は従来の「シャッター方式」と違う、「偏光式」を採用したことがキモなんですね。


 ということで、LGの新商品TV「CINEMA 3D」タッチ&トライイベントに参加したレポートを書きますですよ。

 シャッター方式というのは、目の前で高速に左右のレンズが暗くなったり明るくなったりして、右目用の画像と左目用の画像を見ていました。
 だから部品が多くなって、バッテリーが必要だから重くなって、当然値段も高くつきます。

 シャッター式のメガネはご覧のようにゴツくなり、あまりデザインは選べません。
 フレームの部分に電子部品やバッテリーを入れる以上、コレは仕方がない部分と言えるでしょう。

 しかし偏光式は、右目用の映像と左目用の映像を偏光レンズで分離して見るものです。
 ですからメガネ側に電子部品は必要ありません。ご覧のように部品もシンプルです。当然、メガネは軽くなり、値段も安くなります。

 なにしろシンプルですから、デザインの自由度が高いです。
 右下のようなものもあれば、右上のように軽量なナイロールも選べます。
 さらに左側のように、自分のメガネにセットするだけの超軽量クリップオンレンズ式も選べます。

 
 メガネそのものの原価が安く、なおかつ軽い!
 シャッター式3Dメガネは別売りで買うと1万円くらいになるのですが、偏向式なら1000円程度。
 ついでにいうと、映画館で3Dの映画を見ると偏向式のメガネをもらえることがありますが、コレほとんどの場合、このテレビにもつかえちゃうんですって。それから、イベントやショーで3D映像のメガネをもらった時には、試してみると使える場合が多いそうです。
 家族みんなで3D映画を見に行けば、家族全員分の3Dメガネがそろっちゃいますし、そうでなくても何かのイベントの時にメガネを貯めておけば、友達の分まで3Dメガネがそろっちゃいますね。
 シャッター式の3Dメガネは一個一万円、家族全員分のメガネを買うとすると…。大変ですよね?
 

偏光式3Dとシャッター式3Dの違いとは?

 そのほか、偏光式3D(パッシブ式)とシャッター式3D(フレームシーケンシャル式)の違いについて、この日の登壇者である映像機器評論家の西川善司さんのお話をうかがいましょう。

 
 まずは画面の明るさについて比較してみましょう。
 簡単にいうと、両目で見る偏向式に比べ、シャッター式は片目を閉じてるぶんだけ暗い、ということになります。


 …と書くと、詳しい人は「偏光式は偏光板の分だけ明るさが減るから、シャッター式より暗いはずじゃないの?」と思うかもしれません。
 偏光式3Dでは、テレビの表面に使われている偏光板で明るさが半分になります。しかし、メガネを通り抜けるときには明るさが減りません。
 シャッター式では、常に片目の映像は閉じられています。明るさは半分です。さらに、実はメガネのレンズに偏光板が使われているので、この段階でさらに半分になります。
 シャッター式3Dのメガネに偏光板が使われている、というのは会場の参加者も驚きの情報でした。実際に2つのシャッター式3Dメガネを重ね、90度回転させると暗くなるそうなので、興味がある方は電気店の店頭などで試してみてください。
 
 さらに、画面に表示される情報量の違い。
 シャッター式ならば、右目用と左目用の映像をそれぞれ1920×1080ドットで見ることが可能です。情報量の欠落はありません。
 偏光式では、画面の偶数ラインと奇数ラインを右目用左目用と振り分けていて、それを見ています。だから、1920×1080ドットのディスプレイなら片目辺り1920×540ドットの映像しか見ることができません。片目あたりの情報量は半分になります。


 ここで、120分の1秒の世界で考えてみましょう。
 シャッター式ならば片目は100%の映像を見ているのですが、もう片方の目は閉じています。0%です。両目それぞれの平均は50%です。
 偏光式では片目50%の映像しか見ませんが、両方の目が同時に見ることができます。両目それぞれの平均は50%です。
 120分の1秒の世界で考えると、シャッター式・偏光式それぞれの情報量は互角と言えるでしょう。
 
 さらに西川さんは「運動視差」について考察します。
 ちょっち難しいので、スライドを読んでいただくことにして。
 で、運動視差とは別の話。
 シャッター式では常に片目で。しかし偏光式は常に両目でモノを見ています。
 このことによって、偏光式はいつでも両目で遠近感をつかむことが可能で、自然な遠近感、モノの奥行き感、前後関係をつかみやすくなるのです。


シャッター式3Dのメリットは?

 スライドとイベントの話はここまで、ということで。
 LGさんの偏光式3Dテレビのイベントと言うことで、偏光式のメリットを列記してみました。


 で、たとえば劇場で映画を見る場合、シャッター式のメガネは重くて暗くて嫌われているじゃないですか?
 偏光式のメガネは軽くて明るくて、喜ばれてるじゃないですか?
 じゃあなんで、他のメーカーは3Dテレビでシャッター式なんか採用したんでしょうか?
 それは、やはりシャッター式の方が優れていると考える技術者がいたと言うことと、映画の場合とテレビの場合だと違うから、ということになるのですが。


 まず映画とテレビ、どう違うのか?
 映画の場合、偏光式で3D上映する場合には、2台の映写機を用意して右目、左目それぞれの映像を同時に映写しています。
 テレビの場合、偏光式で3Dする場合は先に述べたように、画面の偶数ラインと奇数ラインをそれぞれ右目用、左目用に分けて上映しています。
 
 このため、極端に画面の上からのぞき込んだり、下から見上げるようにすると、液晶面と偏光パネルがずれて見えて、右目用と左目用の映像がごっちゃになることがあります。
 ちなみにこの部分、今回のLG CINEMA3Dは、かなり平気だったですよ。液晶のガラスが薄いと偏光フィルムが密着するので、上のようなヒドい状態はおこりにくいようです。


 それから偏光式では、左目用の映像と右目用の映像が重なって、余計な影や残像が見えることがあります。これをクロストークと言います。
 
 まさかの手書き3Dサンプル画像ですが、寄り目にすると飛び出してくることが確認されています! ま、飛び出しても嬉しくない画像ではありますが…。
 物体の左右端に、よけいなモノが混じって見えることがある…というのが伝わるでしょうか?
 シャッター式3Dは、原理的にはこのクロストークが発生しません。


 では今回のLG CINEMA3Dではクロストークはどうだったのか?
 じつはこれ、よくわからなかったです。
 サンプルに用意された3Dゲームは砂漠で戦争をするゲームでした。登場する戦車も人も砂漠っぽい色の迷彩色だったので、背景と人の境目が目立ちにくくなっていて、クロストークを確認しにくい環境になっていました。
 そのほか、今回用意されたデモ画像は3Dの飛び出し感を楽しむモノが多かったので、画質評価はちょっと難しかったですね。

まとめのようなもの

 さてさて、長く書いてみましたがまとめです。
 偏光式3Dとシャッター式3D、どちらがよいか?
 どちらも一長一短ありますが、ワタシはそれでもLGの偏光式3Dを押したいところです。
 なぜなら、とにかく導入コストが安いから。
 LG CINEMA3Dシリーズは、普通のテレビよりちょっと高い程度の値段ですし、追加の3Dメガネの値段がとても安いです。
 そしてメガネが軽く、電池いらずで、画面が明るい。


 さらに雑感。3Dテレビの理想を言えば、やはりメガネいらずの裸眼立体視が欲しいところです。
 しかし某社が発売した裸眼立体視の3Dテレビは、とても高価でした。
 3Dのコンテンツがそろってない現状、不景気も相まって、テレビに余計なお金はかけたくないところ。
 というときに、LG CINEMA3Dシリーズは普通のテレビよりちょっと高い程度のお値段です。
 また、テレビとしての基本機能も充実。外付けのUSB HDDを繋げば、録画も可能です。
 ちょっと良いテレビを買ったら、3Dも付いてきた! そんな感じで、LG CINEMA3Dシリーズで気軽に手軽に3D生活が始められそうですよね。


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