ーOOO-うしくん、こんにちは

 会社の通路を歩いていたら、ナニやら視線を感じたので、おもわず振り向いてみれば。
 隣の会社の外階段に、アイツがやってきたのだった。
 
 牛の形のプランター
 優しい笑顔で、なんとも愛らしい顔つき。
 土の素焼きの茶色い感じが、これまたイイ味を出している。
 思わずこちらもニコニコしてしまう。


 あまりのかわいさに、会社の間で噂が広まる。
「うわー、アレかわいいねー」
「なんだか見てると、いやされるねー」
「何か植えてあるみたいだから、花が咲くのが楽しみだねぇ」
「どんな花が咲くのかねぇ?」
 お隣の植木鉢を指さして、わいわいがやがや盛り上がるワレワレ。


 と、次の日は植木鉢が無くなっていた。
「あああ、どうしたんでしょうね…」
「昨日あんまりニギヤカにしたから、うるさいなーと思って隠したんじゃないかな?」
「…え、まさか?」
「いやー、見せるのがもったいないと思って、イジワルしてるんじゃないの?」


 うしくんが戻ってきたのは、3日後のことだった。
「ああ、今日は置いてある!」
「やっぱ、かわいいなー」
 夕方になると、うしくんは片付けられた。
 そして3日にいっぺんくらい、思い出したようにヒョッコリと顔を出した。
「何のつもりなんですかね−?」
「それはよくわかんないけど。でもネコ好きとしては、突然現れたり、ふいっといなくなったりする感じが、ノラネコを見てるみたいで楽しいんだけど」
「あ、なんかわかります。で、あの植木鉢、置く角度が毎回ちょっとずつ違うから、表情が違う感じに見えますよね」
「角度って言えば、あの植木鉢、わざわざこっちに顔を向けてありますよね? 自分たちが楽しみたかったら、反対側に顔を向けるべきなのに」
「あ」
「ひょっとして、ボクらに見せたいんじゃないですかね?」
「…まさか。…でも、そう考えないと、顔をコッチに向ける理由がないよなぁ…」


 うしくんは今も、3日にいっぺんくらいのペースで出たり引っ込んだりしています。
 で、そんな気まぐれなうしくんに会えるかどうかが、ここ最近の楽しみなのであります。