ーOOO-わたしを元気にしてくれるもの

 仕事中やドライブ中は、よくラジオを聞いてるワタクシです。
 会社でいつも聞いている番組ならば、コーナーの順番はおろか、CMの順番さえもわかるくらい聞き込んでいます。
 とはいえ、そんなに真剣に聞いてるわけじゃなくて、あくまでも時計代わりに聞いているという感じ。このコーナーなら何時何分くらいだな〜、みたいな。
 だけど、ドライブでお出かけ気分の時にいつもの番組を聞いちゃうと、脳内が仕事モードになっちゃいます。
 そういうときは、いつもと全然違う番組を聴くのです。


 カーラジオから流れるDJのメッセージ。
「ということで、今日でこの番組、最終回と言うことなんですが…」
 ああ。
 偶然はじめて聞いた番組だけれど、これは最後の放送なんだね。
 いまはラジオの改編シーズンだもんね。
 どうもワタシはこういう「ラジオ番組の最終回の雰囲気」に弱い。
 DJにスタッフ、そしてリスナーのみんなが最終回のムードでしんみりしている中、ワタシは「その番組に何か思い入れがあるわけではないのだ…」という居心地の悪さがあり、かといってそこでワタシがダイヤルを回して別な番組を聴くのも申し訳ない気がする。
 なんだかずるずると引きずり込まれるようにして、知らない番組の最終回の空気にドップリとハマりがちなワタクシなのです。


 ラジオ番組の大改編期は春と秋の2回。基本的にラジオ番組はすぐに打ちきりと言うことはなくて、たいてい2年とか3年とか続くモノなのです。
 「ラジオ冬の時代」と言われ続けて十数年。
 ラジオを聞いてるヤツなんて、まわりにいないじゃないか。
 しかし、その「周りで聞いてるヤツはいない」という雰囲気が、「この番組をきいているのはオレだけじゃないか?」とか、「この番組を支えているのはオレだ!」的な思い入れを産むのです。
 聴取率が低ければ、その低さがゆえにリスナーとDJは堅くむすびつけられていくのです。
 長く長く聞いてきたDJとリスナーの言葉のキャッチボール。
 最終回だから、リスナーからのメールは「いままでありがとう」とか、「やめないで」みたいなメッセージであふれている。
 DJはそれを一通一通読み、時に涙ぐみそうになりながら、グッとこらえて番組は進んでいく。
 DJは「またどこかでみなさんのお耳にかかりましょう」という。
 しかしおそらく、その願いは叶わない。
 DJもおそらく、叶わないと知っている。
 だけどみんな、祈らずにはいられないのだ。


 そういえばいつだったか、ある番組の最終回で、女性のDJさんが
「いつも元気元気!なワタシだから、どうも最終回のしんみりした雰囲気が苦手なんですよね。
 この番組のリスナーの皆さんにも、ワタシの元気な声を覚えていて欲しいです。
 ということで、今日のメールのテーマは『わたしを元気にしてくれるもの』!
 はっはっは。どーだ! リスナー諸君!
 このテーマなら、しんみりするワケにはいかないだろう!」
 といって、メールを募集していたことがありました。
 そしたら、リスナーからたくさんのメッセージが届いて、
「ワタシが落ち込んだとき、いつも元気づけてくれたのは、この番組でした。毎週楽しみに聞いていました。長い間お疲れ様でした」
といったメッセージがたくさん届いて、
「ちょっとー!どういうことなのよ!
 しんみりするつもりはなかったのに、なんか、みんなのメッセージに泣かされちゃうじゃん!」
と、涙声でメロメロになりながらDJさんがしゃべりつづけていたことがありましたっけ。
 アレはなんて番組だったか、なんてDJさんだったか忘れてしまったけれど。
 でも、あのDJさんが今もどこかで元気に番組をやっているといいなぁ、と思わずにはいられないワタクシなのでした。