ーOOO-父と上野と


 今日はお休みかつ良いお天気だったので、父と二人で上野公園まで行ってきたのだ。
 クルマで上野方面を目指すと、ちょっとずつスカイツリーが大きくなってきて、テンション上がる。ほんでもって父もテンション上がる。
 上野駅近くの駐車場にクルマを止めた。
 父が上野駅を見つめて「ここに来るのは久しぶりだなぁ」という。そうね、電車に乗って通り過ぎることはあっても、降りて駅舎を見つめることはなかったかもね。
「ひょっとしたら、上京したとき以来かもしれない」
 上野公園は桜が満開。風がそよぐと、はらり、はらりと花が散る。
 二人でぽつ、ぽつと歩きながら、ぽつ、ぽつと話は続く。
「40年以上前に青森から上京したときに、初めての東京が上野駅だったんだよ。すぐに駅を出て、タクシーで職業安定所に行ったんだ。そこで仕事をお世話してもらってね。行くアテもないから、すぐに紹介してもらった仕事先に行こうと思ったら、『じゃあ、駅まで送ろうか』って、係の人が送ってくれてね」
 へえ? そんなことがあったんだ?
「上京したばかりで、あまりにもイナカモノ丸出しだったから、心配してくれたのかな。とにかくね、職業安定所の窓口の人が、自転車の後ろに乗せてくれて。二人乗りで、駅まで送ってもらったんだよ。仕事先までの切符の買い方を教えてもらってね。改札まで見送ってもらったんだ。3丁目の夕日じゃないけど、そういう時代だったなぁ」