ーOOO-ガリガリの夏

 今日はなんだかクソ暑くて、気温が25度を超える夏日だったとか何とか。こないだまで寒かったっつーのに、ぶつぶつぶつ。
 と、そこで後輩君が言う。
「暑くなったら、例のガリガリ君のヤツがやりたいですよねー」
 おお。そうだ。
 ガリガリ君削り機だ!
 去年の夏、瞬間的にブームになり、あっというまに下火になっていった、アレだ。
 会社のヒトが買ったのだが、「自宅でやったらすぐ飽きてしまったから」という理由でガリガリ君削り機をひとつ、会社に置いてあるのだった。
 そしてこう言った。「ガリガリ君っていうのはつまり、かき氷をスティックで食べられたら美味しいだろうなーっていうアイテムなワケじゃん? それをわざわざ削る必要はないんだよ。そのまま食べりゃぁ良いんだよ!」
 いやー、それはそうだ。
 しかしね、アレをやる瞬間の盛り上がりというか、バカバカしさが良いワケなのですよ。


 たぶんアレをやるのは、夏のクソ暑いとき。
 熱帯夜が続いて、楽しいことが何にも考えられなくなって、会社でみんなグッタリしてるとき。
 アレをやるなら、今日か…?
 今日しかあるまい!
 思い立ったが吉日、仕事が一段落する瞬間を狙い澄まして、コンビニに直行して、ガリガリ君を調達するのだ。
 一本60円。ココは気前よく、後輩たちの分まで買ってあげたりなんかして。
 さあ、これからアレをやるぞー!と思うだけで、ワクワクが止まらない。
 去年ガリガリ君を買ったときは、「あっ、センパイ、スゲーうれしそうな顔してますよ!」と後輩に笑われてしまうくらい、ワタシはニヤニヤしていた。
 そしてひとり一本ずつ、ガリガリする。
 別にすごい美味しいモノじゃないんだ…と、うすうす知りつつも、自分の手でガリガリ削っているだけで、みんな笑いが止まらない。
 削ったガリガリ君は驚くほど少なくなり、小皿にほんのちょっぴりの量になる。しかもどんどん溶けていく。
 溶ける前に、あわててちまちまと食べる。
 そうだ。味は確かにいつものガリガリ君だ。
「ま、こんなモンなんだよな」と言いながら、みんなで笑う。
 ガリガリ君を削った程度のことで、みんなでゲラゲラ笑ったあの日のことを思い出すと、今でもニヤニヤしてしまう。


 別にたいした味じゃないから、あんなコトは年に一回やれば十分だ。
 だけど、すごく楽しみなのだ。
 どんどん溶けていくガリガリ君を食べながら、つかのまの涼しさを味わったことを、懐かしく、かつ、楽しみに思う。
 「やるならこの日しかない!」というクソ暑い夏の日は、いつ来るんだろうか?