ーOOO-じっと手をみる

 医療モノのドラマはキライじゃないので、ついつい見てしまう。
 今期はフジ系火曜10時の「37歳で医者になった僕」というドラマを見ている。
 じゃあいま、オレはこのドラマが楽しみか? っつーと、そうでもない。
 見始めちゃったから、とりあえず最終回まで付き合っとこうか…くらいの消極的な姿勢なのだ。



 このドラマはどういうドラマかというと、「主人公以外の登場人物は全員人間として問題があって、とにかく主人公だけが正しい人間の心を持っていて、いついかなる時も絶体必ず主人公の選んだ答えが最高!」というオハナシ。
 だから、わき役に魅力がなさ過ぎる。
 ほんでもってスーパーヒーロー過ぎる主人公にも魅力が無い。
 主人公は研修医のはずなのだが、独自の判断で勝手に走り出してしまう。
 ドラマの中では主人公の選択がいついかなる時も絶体必ずサイコー! ってなるんだけど、現実はそうじゃないじゃん?
 自分が入院したら、あんなセンセイたちに担当されるの、イヤだな…。そう思うと、なんだか暗い気持ちになるばかりなのでした。


 そんな中で、このドラマの一服の清涼剤は、主人公の恋人役・ミムラ
 ミムラは言葉を失っていて、手話で会話するのだ。
 主人公の草なぎ剛が、落ち込んだとき。笑顔のミムラがやってくる。手話で会話を続けているウチに、だんだん草なぎ君は元気になるのだ。
 それは視聴者であるオレも同じ気持ち。
 彼女はギスギスしたドラマのいちばんこんがらがったタイミングにやってきて、笑顔を振りまくのだ。
 なんかミムラばかり見つめている気がする。


 で、思ったのだが、これはミムラが手話を使っているせいではないか。
 ドラマの中でなんだかイライラするシーンがあると、画面から目をそらして、なんとなく音声だけ聞きながら他のことを考えたりする。
 ムスッとした人が出てるとき。
 怒ってる人が出てきたとき。
 ついつい目をそらしてしまう。
 ああ、うるさいシーンだなぁ…。
 そんなときに、手話で会話するミムラが出てきたら、どうなるか?
 彼女はしゃべらない。
 画面から、音が消える。
 あれっ? つい振り向いて、画面を見てしまう。
 彼女は手話でしゃべる。
 そのセリフの内容は、テロップで流れる。
 テロップを読んでいる間、ワタシの目は画面にくぎ付けだ。
 そこには、静かに微笑んでいるミムラがいるのだ。
 な、コレは見ちゃうべ?
 っていうか、グッと来ちゃうべ?
 そういうわけで、ミムラの手話が見たくてチャンネルを合わせているワタクシだったのでした。