ーOOO-監視社会

 夜も更けたが、ノドの渇きに耐えかねて、コーラを買いに行くなどする。
 我が家の近所のコンビニは、キツい坂を登って下ったところにあり、ということはつまり、帰り道もキツい坂を登って下るハメになるのだ。
 こころよい汗をかいてスカッとした一杯を…などという、さわやかになる炭酸飲料のCMみたいなことはやりたくないのであって、とにかく手っ取り早くプシューッ! グビーッ! プハーッ! と、やりてえのだよ。
 でもって、キツい坂を登って下るデメリットがもう一つあって、自転車のカゴの中でボトルがゴロゴロ揺すぶられることによって、炭酸が抜けちまうのであった。
 とにかく手っ取り早くプシューッ!(中略)と、やりたいオイラ。しかし、炭酸が抜けちまったコーラではスカッとさわやかになれやしない。


 ということで、炭酸飲料を買うときはもっぱら、近所の自動販売機に直行している。
 ご近所の裏道の奥のひっそりとした民家の庭先に、こうこうと明るい自動販売機がドーンと、しかしポツンと置いてある。
 夜中に自転車で直行して、さてどれを買おうかな…としたときに、
「ギーッ、バタン」
というドアの音がした。
 なんかドキッとした。
 …この家のヒトかな?
 なんとなく身構える。
 しかし、誰も出てこない。
 ここで、ふと気付いた。
 あ、この自動販売機に買いに来ると、けっこうそういうことがあるなぁ、って。
 こないだ買いに来たときは、カラカラカラ…って窓のあく音がした。
 その前は、ドタドタドタって走る音がした。
 ひょっとして、この家のヒトは、自動販売機で買いに来る人を監視している?
 いやいやまさか、そんなことをする理由は無いさ。
 だけどアレは偶然? うーん?
 そんなことを考えながら買ってきたコーラを飲んだら、いつもよりヒヤッとした気分になったけど、スカッとしなかった。