ーOOO-けんちん汁と豚汁と

 いつも愉快な弊社における本日の昼食は、ごはんとサンマの開きと具だくさん味噌汁なのであった。
 味噌汁の中には「豚肉、さといも、ごぼう」などなど。
 豚肉が入っているので、豚汁と言って良いだろう。
 だが、ワタシは豚汁というと「じゃがいも、大根、にんじん」というイメージを持っているので、コレが豚汁であるのか、さだかで無かったのだ。
「あのさ、これって、豚汁なのかな? けんちん汁なのかな?」
「いや、豚汁だと思いますよ」と、きっぱり後輩Aは言う。
「フフフ…」と静かにほほえむ後輩B。
「豚さえ入っていれば豚汁なの? じゃあ、けんちん汁はどうなの?」
「ええっ…、そのー…、と、鶏肉とか?」
「えー?そうかー?鶏肉かー?じゃあ、Bよ、おまえはどう思う?」
「えっ…」
「どうなの?」
「…思うに、肉は入ってないんじゃないか、と」
「えー?そうきたかー?」
「意見が割れましたね!」
「っていうかさー、そもそも、けんちん汁の「けんちん」ってなんだろうね?」
「あー、そうですよねー。そもそも「けんちん」が何なのか良くわからないから、イメージがつかめないって言うか」
「…アレかな、ほら、一休さんみたいな、「けんちんさん」みたいな名前のお坊さんがいたんじゃないの?」
「トンチを効かせてきましたね!いや、でも、そこまでひねらなくても…」
「なんか気になってきたな!これはもう、検索するしかないな!」
「っていうか、最初から検索すればいいのに…」
「フフフ…」


「ああっ、Wikipediaによれば、けんちん汁に肉は入ってない、ってよ!」
「おお、当たってたじゃん!」
「フフフ…」
「なんかね、けんちん汁はもともと、精進料理の一種だったんだってよ」
「へー、精進料理なんですかー」
「あ、建長寺の修行僧が作っていた「建長汁」がなまって「けんちん汁」になったといわれる説があるってよ」
「へー、お寺ねぇ」
「コレ、ホラ、おれもちょっと当たりじゃねぇの?」
「え、何がスか?」
「さっき、「けんちんさん」みたいな名前のお坊さんがいたんじゃないの、とか言ったじゃん、オレ」
「あー。ソレは、うーん、「肉が入ってない」って当てたB君はズバリ賞で1ポイントだけど、先輩の場合はちょっと遠いって言うか、ぎりぎりハズレって言うか、うーん、0.5ポイントってとこじゃないですか?」
「そうか。じゃあ、B君は1ポイントで、オレは0.5ポイントだから、0ポイントのA君の負けだ!」
「フフフ…」
「いや、この話は勝ち負けの問題なんですか? っていうかそもそも、コレは豚汁なのに、けんちん汁だって言い出したセンパイの負けなんじゃないですか?」
「フフフ、フフフフフ」