ーOOO-海賊みならい

「海賊と呼ばれた男、という本がすごいらしいねぇ」
と、父が言う。
 そういえば先日”海賊と呼ばれた男”が本屋大賞の第一位に輝いた、というニュースが発表になったばかりだ。
 ラジオで大沢悠里か誰かが紹介して、おもいっきりホメちぎったらしい。
「あれはすごいらしいねぇ、ほら、ガソリンの出光の社長さんの物語で、第二次大戦がうんたらかんたら…」
と、父の話は止まらない。


 そうかそうか、いつもラジオやテレビばかりで心配していたけれど、本に興味を持つようになったかぁ。うんうん。
 そういうことなら、一冊買って、興味が冷めないうちに読んでもらって、読書に興味を持ってもらえるといいなぁ。なんてったって、読書は人生を豊かにするからね!
 と、どっちが親だかわからねぇような気持ちを抱きつつ、本屋へ。
 あった。
 海賊と呼ばれた男が、どーんとほこらしげに。
 ブ厚い!
 そして、上下二冊組み!
 ちょっとひるんだのだが、えーい、親孝行だ!と思いながらレジに持って行ったら、お値段もけっこう重かったよ…。うん、まあ、仕方が無い。


 親孝行のために”海賊と呼ばれた男”を買った!と会社で話したら、
「え、お父さん、読書する人なの?」
 いやー、ふだんは新聞を読むのが精一杯な感じで…。
「そういうことだと、もう見た瞬間『無理!』って思っちゃいそうだよねぇ。二冊組みだし、ブ厚いし」
 そうですよね…。
 っていうかぶっちゃけ、父に貸す前にオレが自分で読んじゃおうと思っていたんだけど、見た目がヘビーだからオレ自身もちょっとひるんじゃって、ついでに買っておいた”ジブリの教科書”なんかを先に読んじゃったりなんかして、なかなか海賊と呼ばれた男に手がつかないんですよね…。
「親不孝者め…」