ーOOO-朝狩り朝帰り

 ウチの子ネコの杏ちゃんは、朝4時ぐらいになると大騒ぎで部屋中を跳ね回る。それは、野生の狩猟本能によるものだ、とかなんとか。
 空が白んでくると杏ちゃんは目覚め、部屋中をグルグルと走り回る。なにやら空中の目に見えぬ物体とバトルを始めたり。全力で走り回るあまり、壁際でUターンに失敗してドカーンと大激突したり。
 ってかね、朝の4時だから! もう、静かにしなさい! と言っても、聞いちゃくれない。
 うるさくてよく眠れない。


 会社のヒトに話したら「ケージに閉じ込めといたらいいじゃないですか?」「夜中は寝室に入れないようにしたらいいんだよ」とかアドバイスをもらったのですが。
 いやいや、そういうもんじゃ無いんだよ!
 オイラが寝るときに、子ネコの杏ちゃんも枕元で丸くなって眠るんですよ! そういうのが楽しいんだよ! 別な部屋とか、ケージに閉じ込めるとか、ありえないから!
「はー…(ダメダコリャ」


 今朝も今朝とて、朝4時頃からどたどた、ばたばた、どかーん! うるさくてよく眠れない。
 と、急に音が消えて静かになる。
 静かすぎて不安になって、ふと目を開ける。
 そこには杏ちゃんがちょこんと座っていて、オイラの枕元にはプラスチックのゴミがおいてありました。
 …???
 ふと気が付いた。
 あ、コレ、ネコのお土産ってヤツかな?
 飼い猫は、狩りをしたときの獲物を、飼い主の枕元に並べることがある、と言います。コレを「飼い主に対する恩返しらしい」という考え方と、「狩りが出来ない弱者に対してエサを恵んでやっているつもりらしい」という考え方があるのですが。ま、とにかく、飼い主がめざめると、その枕元にトカゲやゴキブリの死骸が並べてあることがあるんだそうです。
 とするとこのプラスチックゴミは、杏ちゃんが狩りをしてきて捕った獲物のつもりらしい。
 狩りの獲物を、飼い主であるオレにプレゼントしてくれたんだ、と気が付いた。
 ちょっとジンワリする。
 ほんの2ヶ月まえは、雨に打たれ。寒さに震え、小さな声でニイニイ助けを呼んでいたお前が。
 いまはすっかり元気になって、一回りも二回りも大きくなって。
 こうしてオレに狩りの獲物をプレゼントしてくれるほどの、いっちょまえになったんだなぁ。
 杏ちゃんは、獲物の前でどこか得意げな顔をしていた。そのアタマをワタシは右手でそっとなでてやった。杏ちゃんはゴロゴロとノドを鳴らしてうれしそうだった。


 そしてオイラは左手でそっと、プラスチックゴミを始末したのであった。