ーOOO-推理2題

 例によって例のごとく冬ドラマを視聴中の拙者なのだが、気になったドラマを2本紹介しますね。

ワタシの居場所 …「福家警部補の挨拶」

 フジテレビ火曜夜9時からの「福家警部補の挨拶」は、ざっくり言うと女版古畑任三郎というか、コロンボ物だ。


 今期のドラマは、ワタシが見たところでは、本筋と関係なく家族とかが出てくる作品が多い気がします。
 主人公の若い医師が、災害現場に出動するたんびにいちいち妹が意識不明になった事故のコトを想い出しちゃって診察さえ出来ずに立ち尽くしちゃう「DrDMAT」とか。うん、いや、働こうよ。
 シングルマザーが子育てに奮闘しながら、事件の取り調べをする「緊急取調室」とか。
 「戦力外捜査官」では、主人公の武井咲の両親とか、もうひとりの主人公TAKAHIROが下宿する道場の師範とか、その娘さんが出てきたり。けっこう賑やかです。
 しかし、この福家警部補の挨拶では、そういう家族や友人が出てくる部分は割愛されていることで事件捜査の部分に重点を置いたドラマとなっています。スッキリして見やすいです。
 このため、福家警部補はどんな家に住んでいるのかとか、恋人はいるのか、はたまた結婚しているのか、みたいな私生活は謎に包まれたままドラマは進行していくわけです。まあもっとも、捜査する最中に「そういえばウチのダンナさんがね…」とか言い始めちゃったらまるっきりコロンボなワケで、そこらへんは避けたいところでありましょう。


 主人公の檀れいがキリッとしたメガネをかけているのが、大変印象的かつ魅力的ですな。ちょっと間が抜けていてボサーッとした感じがあるんだけど、観察力と推理力が抜群で、ひとりで事件を解決してしまう。
 キレイだけど、恋人はいるのかなー? 結婚しているのかなー? そういった部分は謎に包まれたまま、ドラマは進行していきます。ムムッ!
 たぶん稲垣吾郎が大事な役のはずなんだけど、主人公と恋仲になる気配があるわけで無し、かといって捜査を助けてくれるわけで無し、じゃあライバルかというとそうでもなく。ドラマのなかを不思議な距離感で漂っています。


 んで、このドラマの中でワタシが注目しているのが、鑑識の二岡を演じる柄本時生だ。
 なんかこう、絶妙にイケてない男子を演じているところが良いわけですよ。映画「苦役列車」のときの森山未来みたいな、サエない感じ。


 ところでアナタは登場人物に感情移入しながらドラマを見たりすることはありませんか? ワタシはありますです、ハイ。
 まあ、今作ではさすがに主人公は無理だ。女性だし、あんなに自分はアタマ良くないし。
 それから稲垣吾郎もムリだ。なんといってもかっこよすぎる。
 というときに、本作の柄本時生はワタシが感情移入するのにもってこいなワケですな。あのイケてない感じ。それでいて鑑識だから、主人公の檀れいの捜査にキチンと協力出来る。良い相棒になれそうだ。
 それでいて檀れいは、まるっきり柄本時生が眼中にない! という部分がすばらしい。柄本時生をものすごい下僕とか奴隷のように見下していて、慇懃無礼に粗略にあつかってみせる。


 ドラマの中の主人公がカップルになっちゃったときに、ソレを純粋にうれしいと思えるかどうかというのは時と場合によるもので。
 というか、どちらかというと主人公たちがキャッキャウフフしているのを見るのはイラッとするコトが多い心の狭いワタクシです。見ちゃいらんねーんだよ。ちくしょう!(ビールを飲みながら)
 で、今作ではドラマの登場人物である柄本時生に感情移入しているワタクシなのですが。しかしもしも、檀れい柄本時生がまかり間違ってキャッキャウフフなんかしちゃったら、イラッとするにちがいないのだ。
 ちくしょう、アイツ、うらやましい!(さらにビールがすすむ)


 その点、本ドラマで檀れい柄本時生を棒っ切れか何かみたいに雑に扱っているし、柄本時生檀れいに振り回されることに心底うんざりしている様子で、くっつきそうにない感じが絶妙なのである。
 ドラマの中に「ワタシ」の居場所があって、そのドラマの中で「ワタシ」がとことんイケてない感じがワタシを安心させるのだった。いやあ、ビールが美味い!
 なんだそりゃ。ぎゃふん。



パズルとしては物足りない、が …「戦力外捜査官」

 日テレ土曜夜9時からの「戦力外捜査官」は、推理物としてはトリックに物足りない部分があるのですが。
 でもこのドラマが描きたかったのはトリックではないのだ、という部分に気がついて、本作はワタシの今期いちばん楽しみな作品となっています。


 捜査の現場から外された主人公2人。
 主人公の武井咲は冴えまくっていて、推理担当。
 TAKAHIROは空手の達人で、力業担当。
 あ、コレ、「相棒」じゃん?
 と、第1話で見切ってしまったつもりのワタクシなのですが。
 それはそれとして、以前このワクで放送されていた「デカワンコ」がけっこう好きだったのですが、戦力外捜査官とデカワンコはドラマのなかでは世界観が近い設定らしくて、親しみが感じられました。
 いずれこのドラマの中にデカワンコが飛び出して来ちゃうんじゃないかなーとか、あるいは「デカワンコVS戦力外捜査官」みたいなドラマとか作っちゃったら面白いのにね−。
 ま、そんな感じで、毎回ユルーく楽しみに見てたのです。


 様子が変わってきたのが、3話目から。
 道行く人を殴って気絶させる連続事件が発生。犯人は事件の様子を動画サイトにアップしていて、そのアクセスはウナギのぼり。
 警察が動画サイトに動画の公開停止やログの提出を求めると、「いや、これ、アメリカのサーバーだから…」とかなんとか、のらりくらりとかわす管理人。
 動画サイトを通じて武井咲が挑戦状を送りつけると、「じゃあ、対決の様子を見に行くオフをやろう」とネットが盛り上がり、アノニマスみたいなマスクをかぶった一般市民が現場にたくさん現れてしまい、そして…。
 この話では、インターネットの「今」を、ドラマの中に必死に取り込もうとしている感じが見えて、スゲエと思ったですよワタシは。


 第4話目では、商店街の金庫泥棒の捜査が発端で。
 主人公たちが商店街を聞き込みして歩いていると、テレビカメラに囲まれた和菓子屋の店主が「帰れ、帰れ!」と叫んでいる。
 話を聞くと、その近所で半月前に殺人事件があって、店主はその容疑者として疑われている、と。そして報道陣でごった返していることで、店の営業もままならないと嘆く。
 この殺人事件については、見てればすぐにピンとくる程度のトリックだったので、9時35分ごろに犯人はアッサリと逮捕されてしまう。
 しかし殺人事件が解決しても、その容疑者として疑われ続けた和菓子屋さんは困難に直面する。
 休業期間中の売り上げ保証があるわけではない。お店を開けられなかった期間中に入っていた注文は全部キャンセルになり、お得意様がぜんぶ他の和菓子屋さんに流れていってしまった。
 この先ドラマはたっぷりと時間をかけて、マスコミに容疑者として扱われた和菓子屋さんのその後の悲劇を描いていった。


 このドラマは、推理物としては犯行のトリックに物足りなさがあるけれど。
 でもこのドラマが描きたかったのは、そこではなさそうです。
 ある事件が起こったときにどんなことが引き起こされるのか?
 犯人は逮捕され、その罪は裁かれる。だけど、その事件にかかわった人物や、一見無関係に見える人物たちは、ひょっとしたら法で裁かれない罪を犯していたのではないか?
 トリックではなく、そういう部分に焦点が当てられたドラマなのです。
 うーむ、なかなか奥深い。


 ということで戦力外捜査官は、ワタシの今期いちばん楽しみな作品となっているのです。