ーOOO-スピードでラーニングしない

 仕事をしながらラジオを聞いている弊社の面々。そんなラジオのCMでは、よくスピードラーニングのCMが流れてくる。スピードラーニングと言えば、ホレ、あれだ。聞くだけの英会話教材というヤツだ。
 このCMは、ラジオのリスナーという「声を聞く習慣」のある人たちには訴求力があるものだ。
 後輩君が言う。
「仕事中にくだらないラジオ番組なんか聴いてないで、たとえばスピードラーニングを聞いていたら、それだけで英語力が上がると思いませんか?」
「んあー、くだらない話を聞いているから退屈な仕事の気が紛らわせるんで、そこで英語の勉強をするのはイヤかなぁ…」
「いや、センパイ、この教材は、勉強する必要は無いんです! ただ聞き流すだけで、英会話が身につくんですよ!」
「え、ホントなんですか?」
「そうなんです! まずお試し用の無料サンプルCDを聞いて、それから続けるかどうかを決めればいいんです!」
「じゃ、ひとりで家でやってみればいいじゃんよー?」
「いやいや、会社のみんなで英会話の勉強をすると言うことで、CDの代金はみんなで割り勘にしましょうよ!」
「えー…」


 そんなスピードラーニングなのだが、去年の暮れあたりに新製品が発表になった。
 その名も、「スピードラーニング・韓国語版」だッ!
 CMからは、おなじみのセリフが流れる。
「この教材は、勉強する必要は無いんです! ただ聞き流すだけで、韓国語が身につくんです!」


 オイラたちは、会社で顔を見合わせた。
「いや、いくらなんでも、聞き流すだけで韓国語が覚えられるとは思えないんだけど…」
「英語って言うのは、まあいちおう学校でやってたことがあるから、『今からちょっと勉強すれば身につくんじゃないか?』みたいな夢が描けるけどさぁ」
「韓国語って言うのは自分の人生で初体験だから、いくらなんでも聞くだけじゃムリじゃねーのって気になりますよね」
「っていうか、そもそも聞くだけで英会話が身につくって言うのも、幻想なんじゃねーの?」
「たとえ英語であっても、聞き流すだけじゃムリなんじゃないの? って、冷静に考え直させられますよね…」
「っていうか別に、いまさら英会話とか韓国語とかラーニングする気、ないしね…」
 弊社の静かなスピードラーニング熱は、発熱することなく伝染することなく、去っていったのであった。