サツキとメイとお母さん ─◯◯◯-

そもそもとなりのトトロ
クサカベさん一家がなぜあそこに引っ越したかというと、
お母さんが病気だからにほかならない。

お父さんは東京の大学に勤めていて、
きっとワリと都心に住んでいたはずだ。

ところでお母さんは七国山病院に入院している。
都心の施設の整った病院ではなくて、
田舎の病院で療養しているということは、
おそらく肺の病気か何かで
都会の空気ではなく田舎の自然の空気が何よりのクスリだからだ。
(調べてみたら七国山病院は肺病専門の病院という設定のようです)

お父さんがあの家に引っ越す、と決めたのは
まず第一に、お母さんが退院したときに
都心にはすぐには戻れないと思っていたから。
そして第二に七国山病院に近いこと。
何かがあったときにすぐに駆けつけられるから。

と、考えると
お母さんの病状は、けっこう深刻だ。

ひどく個人的な体験から言わせてもらうと
本当に重い重い病気の人も、
毎日だんだんとゆるやかに病気が回復していく。
そしてある日、急に症状が重くなる。
そこからまた、だんだんと病気が回復していく。
長い目で見ると、
そのグラフはだんだんと下に向かって下がっていく。
だんだん悪くなっていく。

もちろんそこから快復する人もいる。

けれど、一時退院するはずだったお母さんが
急に具合が悪くなって退院が延期になったとき、
メイが
「お母さんはもう帰ってこないような気がする」
というのは、
なんとなく当たっているんじゃないかと思える。

それでいてラストシーンでの
「ちょっと具合が悪くなっただけなんですよ」
「もうちょっとすれば退院できるよ」
といった夫婦の会話では
二人はお互い元気になるコトを信じている。

そう、もちろん元気になることを私も信じているけど。

以上は勝手な解釈で、
宮崎監督がどのように考えているのかを知る由はないけれど、
「あの電話」が鳴って、
メイがトウモロコシを持って駆け出すシーンを見ると
そこからラストシーンまで
なんだかいつもウルウルしてしまう。