乗馬クラブが始まった! ─◯◯◯-

◆ 以下はあんだんご -乗馬クラブに行こう!- の続きです。
◆  http://blogs.yahoo.co.jp/takatakatantantan/28962.html


さて、そんなこんなで8日間コースが始まった。
期限半年の内に8日通って、最後に試験に合格すれば5級合格と言う話だった。
友人は正会員だったが、私と同じ日に練習を始めて、私と一緒にしか通わなかったから、
二人の講義は全く同じカリキュラムで進行した。
8日間コースの私はヘルメットやムチのレンタル料が無料というか学費込みだったが、
正会員の友人はレンタル料をいちいち払ってムチやヘルメットを借りていた。
つくづくアコギな乗馬クラブだと思った。

始まるとまず、厩舎から馬を連れ出してくる。
馬の全身にブラシをかける。鞍をかけ、ハミをくわえさせる。
最初の授業こそ先生がやってくれるが、
「馬とのふれあい」を重んじるとか何とかで、
すぐに我々が自分でやることになった。
先輩に教えてもらいながら、生徒同士が装着を行った。
私はタワシのように大きなブラシを馬におそるおそる当てた。
馬がブヒヒィンと腹をふるわせたりするのが、
いやがっているのか何だかわからず途方に暮れた。

そして乗馬教室が始まる。
馬の鞍は自分の胸くらいの高さだったか、目の高さだったか?
とにかく途方もなく高いし馬はイヤがって動くしで、
とても自分が座れるとは思えない。
おっかなびっくり馬に乗ると、高さに怖さはあまり感じない。
けれどだまって立ち止まっていても、馬は身震いをしたりする。
止まっているはずなのに全く落ち着かない。
先生の指示に従って、太股を使ってヒザで馬の胴を軽く締めるようにすると
馬はゆっくりと歩き出す。

馬は賢い動物だと聞く。
良くわからないけれど、馬は自分の指示ではなく
ただ前の馬の歩くように歩いているだけに思える。
試みに手綱を別な方に向けると、
「そうじゃなくておまえらいつものコレをやるんだろ?」
と言わんばかりに、先頭の馬に勝手に付いていってしまう。
初心者の内は圧倒的に乗り手より馬の立場の方が上で、
私たちは乗せていただいているという寸法。

先生の乗った先頭の馬がぴたりと止まる。
後ろに続く馬も止まる。
その後ろも、その後ろも、その後ろも。
前の馬が止まるのを見ていなかったらしき女の子が
自分の馬がぴたりと止まったのに身体があわせられず、
前に吹っ飛んで落っこって「ふぎゃぁ」と言った。
その女の子が特別トロかったわけではなくて、
初心者クラスは毎回そんな感じだった。

乗馬が終わると
今度は馬から鞍やハミをはずしてやらなければならない。
そして全身にブラッシング。
馬はすっかり汗だくでハアハアしている。体中から湯気がのぼっている。
この汗を残しておくと馬が風邪を引いてしまうため、
タオルで丁寧に拭き取ってやる。
根性の悪い馬はこのとき、
体を拭いている人の方に近寄ってきて、サクと馬の身体の間に人を挟んでしまう。
それは今思えばいたずらのようなもので、特に苦しいわけではなかったが
やはり慣れないうちは馬の身体に触るのは恐ろしかった。

そしてひづめのうらに溜まった泥を、
ヘラのようなもので掻き出してやらなければならなかった。
ひづめに泥が溜まっていると、そこが腐って、
やがて馬は死んでしまうこともあるという。
ひづめの裏の泥を掻き出すためには、
馬の足をつかんで足の裏をゴシゴシする必要がある。
馬のキックは強烈なのはわかりきっているので、正直勘弁って気分。
「オレ、マジでこんなことやるワケー?」
結局やるハメになった。

ところで馬は真横と前にキックは出来ない。
言葉で説明するのは難しいが、
洗うべき足の斜め前に立って、ひずめをつかんでまっすぐ上に持ち上げると
足を一本だけZ字に折り畳んだような格好になる。
馬は残り三本の足で立っているので、それらの足で蹴ることは出来ない。
さっと足の裏のドロを掻き出し、タワシでゴシゴシひづめを水洗いして、
消毒薬代わりにイソジンをスプレーしてやる。
安心するのはまだ早い。
足を持ち上げる瞬間と同じくらい、足をおろす瞬間も蹴られる危険があるのだ。

体験スクールの時とは違い、講習初日は存分に馬と触れあった。
とにかく疲れた。
この先続けることが出来るんだろうか。
と思う私の気持ちとは裏腹に、
友人はその日の帰り道に私をパチンコ屋に引っ張りこんだ。
友人は骨の髄までギャンブラーだったのだ。


◆     あんだんご -乗馬クラブの日々- に続く。
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