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ひょんなことから、車を買うことになった。
縁あって、友人の知り合いから格安で譲ってもらった。
平成４年式のユーノスロードスター。
個人売買だったのだが、ディーラーで車検に出し、
ディーラーできっちり納車整備をしてもらってから納車となった。

納車の日の夜、
ディーラーであらためてまじまじと車を眺めると、
バンパーのプラスチックの色は微妙に褪せていた。

ボディにはうっすらと傷が付いていた。
前オーナーのボディーカバーのせいで
コスれて出来たのではないかと思った。

リアウインドウの部分のビニールは黄色く変色し
後方視界は悪そうだった。

パワーウィンドウは非常にゆっくりと動いた。
助手席側にいたっては半分開けると
そこから開くスピードが一段と遅くなるので
窓を開けるのはあきらめた。

ディーラーを出ようとしたら偶然ヘッドライトが切れて、、
ライトを交換するはめになった。

なにしろ１３年たっているクルマなのだ。
あちこちガタが来ていても仕方が無い。
まあ、お金がたまってから修理だ。

ところで私が買ったこのクルマはマニュアルで、
私自身はマニュアルに乗るのは教習所以来の１０年ぶりなので、
運転に自信が無く、
友人に運転してもらって家まで届けてもらった。
私の車を運転している友人はチョーご機嫌で、
私は私でそれを後ろから別なクルマで追いかけながら
「ああ、エンジン音がかっこいいなぁ」
とか思いながらニヤニヤしていた。
かなりマヌケ。

納車後に改めて
青空の下や夕焼け空の下で車を眺めると
オーナーになったせいもあるだろうが
実にいい感じで、
古くて安い車なんだけれど、
ボロさをちっとも感じさせなかった。

ところで、前のオーナーである友人の知り合いからは
「もういらないから」と、ボディーカバーも付けてもらっていた。
このボディーカバーをかぶせようと取り出して、びっくりした。
やわらかいＴシャツの生地みたいな布だった。
防水性全くなし。
つまり、このクルマは屋根付の簡易車庫の中に置いてあって、
ホコリをよけるためだけにこの布がかぶせてあった、
ということらしい。

なんとなくわかって来た。
どうやらこの車のボディについているうっすらとした丸い傷は
ワックスをかけたときの傷らしかった。

バンパーの色が微妙に褪せているのも
よく考えてみれば
新車の時からバンパーを交換していなくて、
なおかつ一回も塗装したことがないということで、
それはつまり新車の時から１３年間、一回もコスッたことが無い、
ということだ。

私なんかが買って乗ってていいのだろうか？
コスっちゃったりブツけちゃったりするかもよ？
ちょっとひるむ。

友人が
「あのさ、売ってくれた○○さんが言ってたよ。
　　『初めて洗車するときは、オレのところへ来い』
　って。
　　『あのクルマはワックスをかけるとき、
　　　上手にやらないと塗装が削れちゃうから』
　だってさ。」
と言う。

前オーナーがどれほどこのクルマを可愛いがっていたかが知れる。
泣く泣く手放すのだけれど、
中古車屋に売るのではなく、
目の届くところに置いておきたいのだ。

仕事が忙しかったり雪が降ったりして
今はなかなか乗るチャンスがやってこないけれど、
私がマニュアルの運転に慣れたら
ワックスのかけ方を教わりに
前のオーナーさんの所までこの車に乗っていってみよう、
と思っている。

（とりあえず例の柔らかい布をかぶせて、さらにボディーカバーしてある）