危ない橋を渡る ─◯◯◯-

「危ない橋を渡る、って言うじゃないですか」

「はいはい」

「危ない橋って、
 どんな橋かなーと思ったんですよ。
 谷間にかかる、
 ゆらゆら揺れる吊り橋みたいな感じかなー、とか」

「あー。
 ちょっと板が腐ってたりなんかして、
 落ちたら死ぬ! ってくらい高いようなね」

「ならオレ、渡りたいっすよ。危ない橋」

「んー、気持ちはわかるけど。
 そーね。
 オレもちょっと渡ってみたいかも。
 危ない橋を渡るって言うのは… どんな意味だっけ?
 あんまり危険なことはしちゃいけませんよー、みたいなー?」

 (※広辞苑で調べてみたら
   危ない橋を渡る=危険なことをする・危険な手段を用いる
   だったんですが、
   仕事中の馬鹿話ですんで、ここではそういうことで)

「危険なことはしちゃいけません、ってことなら
 なんかもっと渡りたくないくらい危ない橋があるはずなんですよ」

「あー、そうねぇ?
 …目もくらむような高い谷で、谷底は針が上を向いていて…」

「いや、そーいうんじゃなくって、
 現実に存在するような、
 『うわっ!そんな危ない橋は絶対渡りたくない!』
 みたいな橋がいいんですけど」

「んー。
 TVで見たことあるけど、
 谷に丸太が倒してあるだけの橋があったよ?
 てすりとか全然ないの。」

「でも平均台の長いのみたいな感じじゃないですか?
 けっこう渡れちゃいますって」

「電力会社のCMで見たことあるけど、
 送電線の上を歩くとか?」

「高さと高圧電流で相当危ないっスねー。
 けど、渡るチャンスは一生やってこなそうです」

「んー。あ、そうだ!
 レインボーブリッジの上で車を止めて降りちゃうのは?
 首都高の」

「あー、それはカナリに危ないっすね。
 あとたまにいますよね、路肩に停めてるバカップル」

「んで、レインボーブリッジを
 横に突っ切るとか!
 コレは相当キケンだ!」

「うあー。相当危険だけど…
 …ちょっとやってみたい」