ネコだいすきロードスター ─◯◯◯-

前オーナーの師匠のあふれる愛のためか
なんかおろそかにできない
私の愛車ロードスター

「買っちゃったんだから、
 好きに乗ればいいじゃない、あははぁ」
と、ヒトはいうけれど。
なかなかそう割りきれない。
「ちょっとコンビニへ…」程度の時は車に乗らない。
乗る時は存分に乗るけれど
毎回洗車。
しかも手洗い。
メンドーだが、まあ仕方ない。

前オーナーの師匠から
そういう部分も引っくるめて車を引き受けたような
そんな気がする。
もしこれが自分で新車を買ったなら、
逆にここまでしないんじゃないか?
という気もする。

とか毎日やってたら
ある日、車にキズが。
ぎゃぁああああああああああ!
たぶん猫が車の上で昼寝しようとしてつけた傷。
ネコがボンネットの上に飛び乗ろうとして
ボディの丸さに落っこちそうになって
「チャカチャカチャカッ」っと
足をパタパタさせて踏みとどまったような…

どうやら事件が発生したのは雨の日らしく、
ボンネットには足跡が残っている。
そんでもって泥っぽい足跡は
ポテポテっと
ボンネットの上からフロントガラスへと伸び、
ロードスターのホロ屋根の上で
犯人は雨に濡れた身体の毛づくろいを存分にしたらしい、
ということがうかがえる。
っつーか
屋根の上がネコの毛とか泥とかでぐじゃぐじゃ。
現場は凄惨を極めた。

犯人の遺留品が多いことから
警察が容疑者の特定並びに
ホシを上げるのは時間の問題と思われたが
もちろん警察は呼べないし。
この場合の犯人の遺留品の多さは単に迷惑。

わが家の車庫が近所のネコたちの
光あふれるくつろぎのスペースになっていることは
うすうす知ってたのだが。
なんということでしょう。
わが家の車庫は
これほどの事件を起こすほどのネコだまりなのに
なぜにワタシは現場でネコを押さえることが出来ないのか?
一回ぐらいワタシも
ウチの車の回りでネコが集会を開いてる現場に踏み込んで
強制的に身柄を確保して
ひっくりかえしてノドの下をコチョコチョなでたり
手の肉球をひっつかんで「うにょ」っとやってみたり
そんでもって「ゴロゴロ」言わせたいものなんだけどなぁ…

とかいう妄想はどうでもいい。
事件は会議室で起こってるんじゃないんだ。
我に返って
現場に残された車の傷を、よーく見る。
傷口から地金が見えるほどの引っかき傷。
どうしようどうしよう。
修理工場に出すほどの傷で無し、
自分で塗ってしまおうと思った。

ここで車の引っかき傷の上手な塗り方。
ボディーと同じ色のボディーカラーを用意して、
容器からちょっと出して薄め液で薄め、
極細の面相筆に少量含ませて
引っかき傷の上に、ごくごく小さい「点」を打つ。
薄めた色は、引っかき傷に「スッ」と染み込んで広がる。
毛細管現象だ。
こうして傷の上に小さい点を次々に打っていくと
ボディの関係ない部分に色を塗らずに
きれいに仕上げる事が出来る。
一週間ぐらいたったら
コンパウンドで磨いて仕上がりー♪

と、いうのは分かってるんだけど。
なにしろ傷が多くて、めげる。
細かい作業の連続で、目が疲れ、腕がぷるぷるしてくる。
ボディに近づいて作業をしていたら
他にも傷を発見して、ヘコむ。
あ、色がはみ出た。
あ、ずれた。

投げやりになりたくないが
最後は投げやり感が漂う仕上がりとなる。
自分でキレイに直すつもりが
ダメにしちゃっているイヤな感覚が。

ああ、師匠。オレは師匠のようにはなれませんよ…
っつーか乗ってる以上、車の傷は当然で
キレイに保つのには限界があると思った。
っつーか師匠は今までよく車をキレイに保っていたなあ、と思った。
っつーことで師匠の偉大さを改めて思う。
ああ、師匠、オレは師匠のようにはなれませんよ…
(↑エンドレス思考)