いつもと違う朝 ─◯◯◯-

先日の朝のこと。
通勤のためにいつものように改札を抜け
ホームに降りたところで、
どこからか非常ベルの音が鳴っているのに気が付いた。
ホームにいる人々も皆、左右をキョロキョロしている。
音はどうやら線路の向こうの駐輪場のさらに向こう、
ラブホテルから鳴り響いているようだった。

駐輪場越しなので何が起こっているのか判らない。
煙りは見えない。
遠くから消防車のサイレンの音が響く。
ホームに立っている私は
ただ馬鹿みたいに事態の推移を見守ることしかできず、
消防隊員が全力ダッシュで走り抜けて行くのを
駐輪場越しに見ると、
あとはまた何も見えない。
何が起こっているのか判らない。
そこに電車がくる。
電車に乗る。
そしていつもの一日が始まる。

仕事中も何がどうなったのかは気になった。
でも、お昼のニュースにその事件は流れなかったし
ネットで検索しても何も分からなかった。
逆に言うならそれはニュースにならないほどの事件だった、
つまり、たいした事件では無かったのだ、とは思う。
ボヤだったのか、誤報だったのか。
結局あの日何があったのか本当のことを知らないままで
私は今もなんだか中ぶらりんな気持ちだ。

自分の気になる事件が
いつもテレビのニュースに流れる訳じゃない。
そして自分にとって一番大事な事件は
テレビのトップニュースではない。