ーOOO-富士山に登ると、何キロやせる?…エクストリーム体重測定
「ね、この夏は富士山に登ってみませんか?」
友達の乗り遅れさんは、サラッと切り出しました。
え? そーんなそんな、軽いノリで行くトコじゃないでしょ? と返すと、
「いやいやぁ、そんなたいしたモンじゃないですよ。ボクがむかし富士山に行った時は、友達にダマされて頂上に行ったようなモンだったですよ」
それは乗り遅れさんが、ずっと若かった頃の話。
なんでも、富士山を登る友達を送りとどけるだけのハズ、だったんだそうだ。5合目の駐車場で友達を見送ろうとしたら「せっかく来たんだから、6合目までついておいでよ」と誘われたのだ、と言う。
6合目に行ったら「なぁ、なんでもないだろう? 7合目までつきあえよ」
7合目まで登ったら「もうちょっと、8合目までつきあえよ」
ズルズルと8合目まで付き合っていたら、「ここまできたら、頂上目指さなきゃ!」
そもそも乗り遅れさんは山を登るつもりじゃなかったから、なーんも準備してない。Tシャツと短パン姿だったから寒くて寒くて、ジッとしてられない。身体を暖めるには歩き続けるしかないので、立ち止まらずにガムシャラに富士山の頂上を目指すハメになったので、すんごいツラかった…、という体験話。
「もーねぇ、そんなんでも、富士山の頂上に登れちゃうんですってば!」
登山未経験のワタシは、ただ「ふーん」、と返事。
「んまぁ、でも今回はそんな危険なマネはしませんよ。きちんと防寒着を持ってって、寒さ対策しなきゃね」
うーむ、大変そうだ…。
「今回は頂上を目指すことよりも、とにかく安全に帰ってくることを考えましょう」
うんうん、そうですよね。
このときようやくワタシは気が楽になったのでした。
ところで、7月1日は富士山の山開き。
この前日の夜から山頂をめざし、山開きとともにご来光を拝もうじゃないか。
そんでもってTVにインタビューされちゃったりしようじゃないか。
富士登山の夢に、話ははずむ。
じゃあ、まずは登山の道具でもそろえようかな? と、まずは二人そろって新宿の登山用品店へ。意気揚々と1階から8階まで階段を登っただけで、息も絶え絶えに。
登山するはるか前から、ワレワレはすでに前途多難。
「残念ながらワレワレはもはや、中高年なのですッ!」
(→ーOOO-新宿冒険譚)
そしていよいよ、6月30日のこと。
ワタシは乗り遅れさんと二人、予定通りに富士山を目指し、中央道を進みます。
このときはまだ梅雨明けしてなくて、前々日に台風5号が通り過ぎたせいで梅雨前線は刺激されまくり。天気はくるくる変わる。
気温35度の快晴でうだるような暑さだったかと思うと、突如バケツで水をブッかけるような大雨になったり。
途中で立ち寄った談合坂SA。
雨がやんで晴れ間がのぞいたけれど、焼けるような暑さの地面が急な通り雨に冷やされて、路面といわず森といわず、あちこちから湯気が立っています。
あまり旅に出ないワタシには見なれない、不思議な風景。
あまりにもめまぐるしく変わる天気に一抹の不安を覚えつつ、雨に濡れた緑の鮮やかさにワタシの心は弾みました。
大月ICから高速を降りると、このへんは標高が高いせいか、いくらか涼しくなってきました。
正面の上空を横切る橋が、リニアの実験線なんだとか。開業のあかつきには、リニアは一瞬でここを通り抜けていくのでしょう。
かとおもうと、かわいらしいローカル線がコトコトと走ります。
富士山を目指す道のりは、基本的に登り坂が続きました。特に富士吉田市は平らな地面がないんじゃないかと思えるほど、全体的になだらかな坂で出来た街でした。
富士急ハイランドが見えると、そこはもう富士スバルラインの入り口です。
通行料金2000円。
富士登山シーズンに入る直前の道路はまだまだガラガラで、すれ違う車もほとんどありません。
むせかえるような山の臭いはどこか甘く、森の間を右に左に縫いながら長い長い上り坂を行けば、窓の外の気温はみるみる下がっていきます。
ときおり地元ナンバーのワゴン車が、どえらい勢いでカッ飛ばしていきます。コーナーを2つ3つ曲がると車の影さえ見えなくなる。すげえ。
急に霧がかかってきました。
これが山の天気の変わりやすさだとも言えますが、いまワタシたちはスゴい勢いで高度を上げ、雲の上に抜けようとしているのだ、とも言えますよね。
途中でちょっと休憩。2合目だったか、3合目だったかな?
頂上に笠雲が見えるので、山の形が写真に撮れなくて残念だったです。
「いや、笠雲は天気が荒れるかもしれないサインなんですよ…」と、乗り遅れさん。
スバルラインの4合目を超えたあたり。
周りの木々が少なくなって、岩や砂がむき出しになっています。
道路にはところどころ、落石を除けるための屋根がありました。
そうして私たちの車は唐突に、富士山の5合目にある駐車場に着いたのでした。
東京方面から、ほんの3時間ほど。あっけない近さ。
明日の山開きを前にして、駐車場には何台もの観光バスが止まっていました。
そして何組もの団体が、今まさに山頂を目指して出発していくところでした。
写真の中央右手を一列に歩く団体さんが見えますか?
到着したばかりの私たちは焦ることなく、まずはお土産物屋をのぞきました。
これはムダな寄り道ではなく、高地順応に時間を割いて高山病を予防するという理由もありました。
空気の薄い5合目でいきなり動き始めれば、やはり酸素の薄さが身体にこたえるはずです。そうならないように、ゆっくりこの場所で時間を過ごし、酸素の薄さに身体を慣らしていたのです。
お土産物屋の間には、小御岳神社がありました。
明日の山開きを前にして、これからお祭りのようでした。
祭りの本番はこれからという感じでしたが、それを見届けていたら山に登る時間が取れません。
そろそろ出発の準備です。
車に戻ったワレワレは、とりあえず駐車場の片隅でお湯を沸かし、モチや鶏肉の入ったインスタントラーメンをたっぷり作りました。
あたたかいものをゆっくり食べて腹ごしらえです。
「じゃあ、そろそろ山に登りましょうか? 体調はどうですか?」
と乗り遅れさんが尋ねましたが、ワタシは
「うーん、ちょっとフワフワする感じがするかな…」
正直、ワタシは山の五合目に着いてから、息が荒くなってました。なんだか空気が薄い気がしてなりません。もっともコレは、ワタシがビビって気にしすぎただけかも…。
「わかりました。じゃあ、ちょっとだけ山を降りましょうか?」
私たちは車に乗って、いったん4.5合目あたりまで下りました。
高度が下がれば酸素が濃くなるので、軽い高山病ならこれで治ってしまいます。また、いったん高度を下げることは、高地適応のために良いことのようでした。
高山病なんて、大げさな…と思ってたんですが、ごらんのように写真が手ブレしてたので、あの時はやっぱりボーッとしてたのかなぁ…。
時刻は夜7時半くらいです。
4.5合目の駐車場まで降りた私たちは、ここでようやく登山の準備に入りました。
リュックサックの中身には、寒さ対策のために服をぎっしり詰め込みます。
サッと取り出しそうな物は、ちいさなバックに詰めました。水筒と、ちょっとした携行食としてアメ玉。それからデジカメ。
カバンとリュックはパンパンだけど、この先ちょっとずつ携行食を食べたり、寒さ対策に服を着込むはず。
寒さに備えて、コレだけ念入りに準備したから大丈夫。
このときのワタシたちは、そう思っていました。
さてさて。
いつも激しい運動をするたびに体重をはかってきたワタクシなのですが。
じゃあ、富士山を登ると何キロやせるんでしょうね?
っつーコトでワタクシ、今回も体重を測定するのであります。
こちらは当日の朝、自宅を出発する前に体重を測定したときの写真。
最近、悲しくなるほど太ってきたなぁ…ということが一目瞭然なのですが、まあそこいらへんは置いといて。
体重が93.4キロ、体脂肪率30.2。
で、これが登る直前の再測定。登山中は着ている洋服が変わるだろう…ということで、すべての荷物を持って計ってみました。
むむむ、まさかの100キロオーバー。荷物と洋服が10キロありますね…。
体重は103.6キロ。
で、ワタシの荷物も重くなっていたわけですが、乗り遅れさんはさらに大変なことになっていたのです。
バーナー、コッヘル。ビニール製の簡易寝袋などなどの登山グッズ。
山頂で飲むための缶ビール、二本。
お雑煮を作るために、お餅が何切れか。煮込むために水がいるので、2リットルの天然水のボトルを、2本。
そのほかそのほか。
このとき体重計で測ったら、荷物だけでも20キロくらいあったとか。
乗り遅れさんの体重は50キロほどだと言う話なので、体重の半分近い荷物を背負って登ることになるわけです。
実際の富士山登山の参考にするためにこのページを読む人もいるかもしれないので先に書いておきますが、夏の富士登山にコレでは装備が重すぎです。
装備20キロだと、冬山に何泊かするようなレベルの重装備、ということになるんだそうです。
この装備の重さが、のちのちワレワレを苦しめることになったのでした。
富士山に登ったら何キロやせる?
- →エクストリーム体重測定
- いきなり下るぞ富士登山
- 遙かなる富士山頂
- で、結局何キロやせたのよ?